高度な技術力で、世界とつながる光通信を支える
ーーースミテックさんの事業内容について教えてください。
弊社は1984年、住友大阪セメント株式会社の子会社として設立されました。当初はプリント基板の実装などを行っていましたが、親会社の光電子事業の中核を担うために業態転換し、現在は光ファイバー通信システムの心臓部とも言えるLN変調器を生産しています。
LN変調器は、デジタル電気信号を光信号に変換する重要なデバイスです。今や皆さん当たり前のようにビデオ会議システムやスマホでの動画配信サービスを利用していますが、それは、このデバイスがあればこそ。世界中の人とクリアな画像でつながり合えるのは、この製品が目に見えないところで働いているからなんです。
在庫管理を徹底し、現場の作業負担を軽減したい
ーーーシステムの導入を検討した背景を教えていただけますか?
大きな目的は製品のトレーサビリティです。当初、弊社は社内の人間がつくったデータベースで在庫管理をしていました。しかし、つくった本人しかメンテナンスできないという問題があり、その後、既製のパッケージシステムを導入したんです。
しかし、製造する製品が代替わりすると工程が変わり、入力項目や入力順なども変わってしまいます。それがパッケージシステムでは対応できず、不便さを感じていました。
一方、弊社のLN変調器は親会社でチップをつくり、それを弊社で製品にアセンブリするという流れで生産しています。そのため両社のデータをインターネット経由で共有したいという希望があり、これまでの課題も解決しようとグループ会社で基本となるシステムをつくったわけです。
ところが、実際に運用が始まりしばらくすると、現場で入力に手間がかかっていることがわかりました。そのため「入力作業だけは何とかしなければ」と、そうした分野に強い会社を探したところ、たどりついたのがスノーピークビジネスソリューションズ(以降、SPBS)さんでした。2018年にご相談したのがお付き合いの始まりですね。
ユーザーに寄り添い、想いをくみとってカタチに
ーーー導入の決め手は、どこにありましたか?
まず、他社とも比較検討しましたが、大掛かりなシステムを提案されることが多かったところ、SPBSさんはシステムをゼロから作り上げるのではなく、パッケージをこちらの要望でカスタマイズできる点がマッチしたことが挙げられます。
また、ハンディターミナルでQRコードを読むだけで在庫管理ができる、ハードウェアもさまざまなラインナップを揃えている、とご紹介をいただき、これなら現場に導入しやすいと感じました。
さらに、「これしかできません」という回答が返ってくることが多い中、ユーザー側の希望に寄り添って考えてくれる姿勢も好感が持てました。
私は、工程はわかっていますが、システムの専門家ではないので具体的な指示はできません。でも、「このデータを自動的にピッピッと取り込むことはできませんか?」とこちらの希望をお伝えすると、「こんなのどうですか?」とすぐにご提案いただける。こちらのビジョンや思いを伝えれば、次々に解決策が提示されて進んでいくので、非常にやりやすかったです。
トレーサビリティを確立し、現場の作業負担が軽減
ーーーシステム導入後の効果について教えてください。
ものづくりの流れとしては部材管理、工程管理、製品出荷の3部門があるため、各部門にハンディターミナルと、現場の業務に合わせたシステムを導入しました。
これによってハンディターミナルでQRコードを読み取るだけで、部品のロット情報や作業者名、作業日などが簡単にデータベースへ蓄積されるようになり、受け入れた部材の在庫管理から出荷製品の照合までをトータル的にデータ収集することによって、製品のトレーサビリティが確立できました。
特に組立の工程では、それまでExcelに手入力しUSBメモリに保存して上位システムにデータを移していた作業が、ハンディターミナルで一気にできるようになったのは、大きな改善でしたね。基幹システムとのデータ受け渡しの際、PCから自動で基幹システムに送るようにしたり、部署ごとに必要な情報をPCに自動で読み出したりと、基本的な通信インフラをつくってもらいました。その後、完成品の検品機能も加え、人間の目とハンディターミナルによるダブルチェック体制で出荷しています。
各部署が使い勝手よく応用できるようなシンプルな仕組みにしていただいたことで、徐々に各所で利用が広がっています。今後はさらにその活用を広げていきたいですね。
システム導入を機に、組織にもより良い変化が
ーーー弊社のコンサルティングも導入いただきましたが、いかがでしたか。
単にシステムを入れて終わりではなく、どう浸透させるかまで支援する。そこにSPBSさんの特長が表れていると思いました。
「新しいシステムの導入には拒絶感が出る」「運用のスタートは苦労する」とお聞きしていたため、どうしようかと一緒に検討することから始めました。現場の困りごとを解決するためのシステムであるという考えを現場の社員たちに理解してもらえるよう、導入までのプロセスを共有したことは、一定の成果があったと考えています。
もちろん、導入時は既存システムとの並行運用になり、単純に作業が増えるので現場に抵抗感があったのは事実です。しかし、現場の作業リーダーがこのコンサルティングに非常に共感し、みんなを引っ張ってくれたので助かりました。
その後、彼は業務の中で何かあると、全員で困りごとを出し合って集約し、「ここをみんなで頑張れば問題が解決するんだ」と説明するなど、SPBSさんのコンサルティング手法を日常的に活用しています。これは想定外の効果でした。みんなで同じ方向を見て一緒に進んでいく姿勢が生まれ、組織のコミュニケーションにも良い変化が起きています。
予期せぬ出来事によって、あらためて真価を実感
ーーーシステムが現場に定着したと感じたエピソードはありますか。
2021年3月、我々にとって大きな出来事がありました。工場で火災が発生したんです。火事の規模は小さかったものの、製造設備が煤で使用できなくなり、システムを導入した工場が使えなくなってしまいました。
そのため生産工程を別工場へ移転したのですが、その際、現場の社員があたり前のように、すぐにハンディターミナルを復旧させている姿を見て、完全に定着したことを実感しました。とり急ぎ生産を再開するなら汎用パソコンと基幹システムがあればできるわけですから、やはり利便性を感じていることがよくわかりましたね。
また、火災後、製造は中川工場で、受入・出荷は引佐工場でという2拠点体制になったのですが、その際、システムを部門ごとにあえて分けていたことが奏功しました。柔軟なシステムのおかげで細かい部分まで調整できたため2拠点をスムーズに動かすことができるようになり、現在は生産に邁進できています。
信頼関係のもと、一緒にものづくりが進められる
ーーー今後、SPBSに対して要望がありましたら教えてください。
今後の話をしますと、次世代商品が商品化のフェーズにあり、親会社の方では新しい製造ラインの構築が必要になるだろうと予想しています。
その際、SPBSさんのハンディターミナルによる入力の自動化は、とても魅力的だと思うんです。我々が便利に活用しているのを見て知っていますし、私も非常に良いと話しています。
こうしたお話ができるのも、SPBSの皆さんと大変良い関係が築けたと思うからです。直接、開発担当者と打ち合わせができるので、レスポンスが的確で早い。私としてはとてもスムーズに楽しく仕事ができました。気をつかわず冗談を言い合ったりして、信頼関係のもと、一緒にものづくりを進めることができたと感じています。
今後もこの関係性を大切にし、さらに良いものをつくるために相談に乗っていただきたいと思っています。
ーーー スミテック様、取材のご協力ありがとうございました!