各分野で活躍するポンプ製品を一貫体制で提供
---三菱重工 (水・エネルギー部)さんの事業概要を教えてください。
三菱重工は明治17年(1884年)の創立以来、高度な技術力で日本の発展を支えてきた国内最大の技術開発メーカーです。事業フィールドは、陸、海、空、宇宙にまで及び、民間航空、輸送、発電所、ガスタービン、機械、インフラ、防衛・宇宙システムなどの事業を各国で展開しています。ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、現在はカーボンニュートラル社会の実現に向けた挑戦に取り組んでいます。
その中で私たち水・エネルギー部は、設計・製造から販売、アフターメンテナンスまで行う一貫体制のもと、さまざまポンプ製品を世に送り出しています。発電所向けや各種工場向けのポンプ、船舶用の推進装置などを主力とし、提供分野は多岐にわたります。
最近は水素ステーション向けの超高圧ポンプや洋上風車のメンテナンス船舶の推進装置など、持続可能な世界の実現の一助となる製品の開発も進めています。
みんなが気持ちよく働けるオフィス環境をつくりたい
---キャンピングオフィスを検討された背景をお聞かせください。
まずはハード面です。弊部のオフィス部門が入る建物は築25年以上経過しています。長年慣れ親しんだオフィスではありますが老朽化が気になる状態でした。もうひとつはマンネリ化した環境を変え、働くメンバーに気持ちをリフレッシュしてほしいという気持ちもありました。働く環境が変われば、働く人の気持ちも変わるはず。そのためにも、これまでにないオフィス環境を創りたいと考えたんです。
ただキレイなだけではなく、みんなが気持ちよく働けるオフィス。そこを最大の目標として、どんな空間ならそれが叶うかとオフィス改革の有志メンバーで考えたとき、注目したのがキャンプ用品を使ったキャンピングオフィスです。他部署もあちこちでオフィスのリノベーションを行っているんですが、「どうせ変えるならみんなの想像を超えていこう」という想いもありましたね。
従来のオフィスとは異なるキャンピングオフィスの導入には、当初、否定的な意見もありました。ただ、昨今の急激な時代の変化に私たちも対応する必要があります。オフィス環境に関する既成概念も変えるべきときに来ている。それに職場の心理的安全性を高めれば、社員のモチベーションが上がり、それによって組織も活性化し業務にも良い効果がある。そんな確信があったので熱意をもって提案したところ、採用されることになりました。
キャンプギアの使い方や働き方、すべてが新鮮で参考に
---弊社のギアやプランを採用した決め手はどこにありましたか。
最初はウェブで、スノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)さんのキャンピングオフィスの導入実績を確認させていただいたんです。すると多くの企業に採用されていて、とてもユニークですし、キャンプギアでひとつ上のオフィス環境を目指すならスノーピークでしょう、と。また、オフィス空間のデザインからレイアウトまでお任せできるところは他になく、SPBSさんにお願いすることにしました。
実際にキャンプギアを使ったオフィスでの働き方を見たかったので、SPBSさんのオフィスを訪問させていただいたことも大きいですね。キャンプギアの使われ方や社員の方々の働き方を見学し、改めて想いを強くしました。キャンプギアではありませんが、東京のオフィスとつながるConova※にも驚きました。もうそこに相手がいるかのように一体感がある。弊社の場合はオフィスと工場が同じ敷地内でも離れていますので、その点も今後の参考になりました。
※SPBSが開発した物理的な距離を超えて、等身大の姿・音・空間をつなぐコミュニケーションツール。
また、オフィスが地域の情報発信拠点となり、地域の方々が集まって社員の皆さんと交流している様子も、見たことがない光景ですばらしかったです。プライベートで新潟のHEADQUARTERSを訪れたときも社員の方のお話を伺い、やはり働き方が面白い会社だな、と刺激を受けました。
芝生に座って会議など、社員の活用ぶりは想像以上
---スペース活用のための工夫は?皆さんどう活用されていますか。
リノベーションでは執務エリアを縮小してコミュニケーションエリアを拡大し、そこにキャンプギアを導入しました。空間コンセプトは、リラックスと出会いとイノベーション。仕事を離れて休憩しながらも偶発的な出会いによって対話ができ、仕事の斬新なアイデアが生み出せる場、イノベーションを起こせる場になれば、という願いを込めました。
スペースの愛称は投票で「Communication Base」と命名。周知を図るためポスターをつくり(図参照)、ここで使えるコーヒーチケットを配布したり、打ち合わせに使ってもらえるように働きかけたりと、みんなに活用してもらうために最初は工夫をこらしました。偶発的に対話が生まれ共通の趣味が見つかれば、と思って本なども置いています。キャンプ好きな人が多いことがわかったので、スノーピークさんのカタログも置いてるんですよ(笑)。実際に、「Communication Base」での会話がきっかけでチームメンバー10人ほどでキャンプにも行きました。お互いのプライベートな姿を知ることができ、さらにエンゲージメントが深まったと感じています。
現在は、みんなそれぞれお気に入りのエリアがあり、こちらの想像以上に活用しているようです。特にジカロテーブルを置いた芝生エリアは人気ですね。最近は靴を脱いで芝生に座って、そのまま会議を始めるケースも増えています。TUGUCA※は、コーヒーブレイクなど、一人で息抜きしたい時に使われています。
※人数や空間規模・目的に応じて多様なカスタマイズが可能で、オフィスにも最適なスノーピークの家具。(上図写真)
「Communication Base」からは淡路島の遠景を眺めることもでき、窓際でリラックスタイムを過ごす人も。本スペースは予約せずに、ふと思い立ったときに使えることがいいという声も多く、社員の隠れた需要に応えられたのも良かったです。
働く環境への意識が変わり、意見が寄せられるように
---リノベーション後の皆さんの変化についてお聞かせください。
「Communication Base」の誕生後、社員の意識や行動の変化を目にする場面が増えました。導入前後でアンケートを取ったのですが、導入後は回答率が大きく上昇し、何かしら気づきがあったことがわかります。
アンケートには「個人スペースは会議がしやすい」「休憩スペースが開放的で明るくなった」「今までと全く印象が変わってすごくいい」と好評の声がいろいろと。オフィス改革メンバーの労をねぎらう言葉もあり、我々の意図が伝わったんだと感じてうれしかったです。「次はオフィスチェアを新しくしたい」「カーペットを変えたい」「他の会議室も刷新を」など、オフィス環境に関するさまざまな考えや意見も寄せられるようになりました。
こうした声が出るのは、働く環境についての社員の意識が高まった何よりの証拠です。みんなのモチベーションを上げたいと考えてのリノベーションでしたが、その目的が叶えられつつあると実感しています。芝生に座って会議をするなんて今までは想像もつかないことでしたが、今はそれが自然とできている。これから、新しいアイデアがここから生まれるのでは、と大いに期待しています。
オフィス改革をきっかけに、自ら動ける集団へ
---今後の展望についてお聞かせください。
今後は「Communication Base」でイベントを開催するなど、さらに社員に活用してもらえるきっかけを提供したいと考えています。また、「よりよくしたい」という変化を求める声を反映してオフィス環境を充実させ、もっと突き抜けた空間を創りたいですね。
目標は、みんなが気兼ねなく自分の意見を言い合える、心理的安全性のある環境を創ること。心理的安全性とは、相手への気遣いを持ちながらも気を遣わない関係性だと思うんですね。そうした関係性や環境が実現できれば社員一人ひとりが幸せになり、会社も自ずと幸せになるのではないでしょうか。
また、既成概念にとらわれない自由な発想で、時代を先駆けて進みたいと思っています。安全第一というこれまで守ってきたことを維持しながら、「気遣いせずに気を遣う」という暗黙のルールで自律的な組織を目指していきたい。今、「Communication Base」の使用にルールは設けていませんが、みんなでマナーを守って活用できており、組織全体としてもその方向性で動いていきたいですね。新しいオフィス環境をきっかけに、自ら考えて動ける集団へ成長していければ、と願っています。
---三菱重工業株式会社様、取材のご協力ありがとうございました!