旅行者と旅先をつなぎ、日本の旅行サービスを牽引してきた株式会社JTB様。現在は事業ドメインを拡大し、「交流創造」をミッションとして企業と顧客、企業と従業員、企業と地域・社会をつなぐ企業向けコミュニケーション領域においても積極的に事業展開しています。
本年7月には、キャンプをイメージした空間演出を施し、同社と顧客企業とのエンゲージメント向上を促すイベントを開催しました。そこにはどんな意図があったのでしょうか。イベントを仕掛けた皆さまに話を伺いました。
お客様:株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 事業推進チーム 齋藤友輔様、マーケティングチーム 前澤美保様
イベント企画運営:株式会社JTBコミュニケーションデザイン コーポレートソリューション部 モチベーションイベント局 田井威久様
(担当:スノーピークビジネスソリューションズ HRS事業部 古川草馬)
企業がコミュニケーション課題を解決するためのソリューションを提供
--- JTB(ビジネスソリューション事業本部)様の事業概要を教えてください。
JTBグループは「つなぐ、つなげる」を価値創造の源泉として、地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献することを経営理念としています。その中でお客様を「旅行者」「地域」「企業」の3つにセグメントし、ビジネスユニットを形成しています。
私たちビジネスソリューション事業本部は「企業」を主たるお客様とし、企業と顧客、企業と従業員、企業と地域・社会をつないで、コミュニケーション課題を解決することを事業ドメインとしています。その手段は旅行に留まらず、ビジネスイベント、人材育成コンサルティング、HRサーベイ、福利厚生サービスなど多岐に渡ります。
JTBグループ全体を支える重要な領域となるべく、JTBの成長戦略に位置づけられている事業本部です。ともにイベントを運営した株式会社JTBコミュニケーションデザインも、同事業本部の一員として私たちと同じユニットに含まれています。
組織エンゲージメントの向上にキャンプの力を
---イベント概要と、キャンプをイメージした演出を取り入れた理由を教えてください。
本年7月に、大手町駅直結の大手町三井ホールにて企業向けイベント「JTB Engagement Camp」を実施しました。弊社の既存のお客様100名ほどを招待し、エンゲージメント向上の意義や手法を学び、エンゲージメントを高めるソリューションのご案内やこれまでの取り組み事例を紹介する機会として開催しました。弊社とお客様とのエンゲージメントを高め、コミュニケーションを深めることも目的の一つでした。
コミュニケーションが希薄になってしまったコロナ禍を経て、オフラインイベントが戻ってきた今、人と人とのオープンマインドな交流、友好的なつながりはビジネスの場でも求められています。そこで、「エンゲージメント」をテーマにお客様とともに企業におけるステークホルダーとの「つながり」を考えるイベントにしようということになりました。
では、エンゲージメントを高めるためには何が必要だろうかと考えたときに、非日常のリラックスできる空間であれば、普段のビジネスの場とはまた違ったコミュニケーションが生まれるのではないか、そのような空間にご案内することでお客様の心を動かすことが出来るのではと考えました。とはいえ、アクセスの良さも考慮して、都心部のイベントホールにキャンプフィールドのような空間をつくることで「サプライズ」を生むことができるのではというアイデアにたどり着いたのです。
スノーピークの体験価値を後ろ支えに
---スノーピークのアウトドア製品を採用したのはなぜですか?
まず一つは、アウトドアにおいてスノーピークのブランドイメージが空間に適していると感じており、また参加していただくお客様の関心も高まることが期待できました。
そして、屋内のイベントホールに非日常のキャンプ空間をつくるというのは、私たちとしては初めての試みでしたので、アウトドアをビジネスに取り入れる提案に長けているスノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)さんに後ろ支えしていただくことへの安心感がありました。実際に、会場での設営や空間演出のアイデアなどで助けていただき、思い描いた空間づくりをすることができました。
弊社の担当者がスノーピークさんのイベント「LIFE EXPO」に足を運び、自然指向のライフバリューを提唱する考え方に共感し、その世界観を屋内のビジネスイベントに持ち込んだら面白いのではないかという意見を出したことも、今回の企画の発端になっています。
遊び心ある演出が、ラフなコミュニケーションを生む
---当日の会場演出や装飾はどのようなものだったのでしょうか。
キャンプをテーマにした空間演出を徹底しました。会場全体の装飾はグリーンを基調とし、大小の植栽や人工芝を効果的に取り入れています。メインステージ前にはアウトドアチェアを置いて集中しながら講演に耳を傾けていただける空間に、会場後方には焚火台を配置し、立食エリアやDJブースを設けるなどして、自然とコミュニケーションが生まれる空間をつくりました。
メイン会場手前のホワイエにはサブステージを設けました。こちらにはSPBSさんから提案いただき、来場頂くお客様導線の正面にくるようにテントを張ったのですが、それがイベントを象徴するモチーフとなりました。
空間だけではなく、ケータリングで用意した食事にはキャンプを意識したメニューや装飾を取り入れ、ゲストをお招きする私たちはカジュアルな服装でお客様をアテンドする試みも行いました。これまではジャケット、ネクタイ着用が基本でしたが、キャンプというテーマを踏まえて、カジュアルなおもてなしでリラックスできる空間を創出をしたいと考えたからです。
滞在時間は4時間越え! エンゲージメント向上を体感できた
---イベント参加者の反応はいかがだったでしょうか?
来場いただいたお客様と弊社の営業スタッフの双方にヒアリングをしましたが、想像以上に好意的に受け入れていただいたと感じました。
お客様からは、「いつもよりリラックスして参加できた」「今までにない空間演出とおもてなしを受けて、JTBへの信頼度が増した」といった声、営業スタッフからは、「お客様との雑談の中で、これまで聞けていなかったようなお話までしていただけた」「JTBのイベント運営に対するケイパビリティを伝えることができた」といった声をいただいています。
驚いたのは、お客様の平均滞在時間が4時間を超えていたことです。ビジネスイベントでは講演を行なってから懇親会という流れが多く、講演のみで帰られる方や懇親会に少し顔を出して帰られる方は、2時間から2時間半程が滞在時間の目安でした。今回のイベントはお客様との接触時間が圧倒的に長く、リラックスした空間でコミュニケーションをとるという狙いが受け入れられた結果です。
お客様にはエンゲージメントというテーマを体感していただきながら、自社のエンゲージメント向上につながるヒントをイベントの中で得ていただいたのではないかと思います。
これからの時代の新しい価値観を牽引していきたい
---今後の課題や取り組んでいきたいことはありますか?
これまで、弊社主催のビジネスイベントは比較的かっちりとした会場でお客様を丁寧におもてなしするというスタンスでした。今回は思い切ってカジュアルな方向性に振ったので、当初は「本当に大丈夫?」といった営業スタッフからの反応もありました。しかし、蓋を開けてみたらお客様にも営業スタッフにもポジティブに受け入れてもらうことができ、新しいパートナーシップの扉を開くことができたのではないかと思っています。
本来、企業と顧客は同じ課題に取り組むパートナーであり、同じ目線で、フラットに議論できる関係性が必要です。海外では当たり前の価値観かもしれませんが、日本では受発注の間柄という考えがあり、カジュアルなおもてなしの手法も目新しく映ったのだと思います。
私たちとお客様のエンゲージメントを高めることができた今回の事例を生かして、次は来場いただいたお客様がお客様にとっての顧客や従業員、地域・社会と新しい価値観でより良いパートナーシップを築き、エンゲージメントを高めていく支援をさせていただきたいです。
また、JTB×SPBSのコラボレーションによる空間演出をお客様にも今後は提案していきたいと思っています。SPBSさんでは専門家とともにアウトドアをビジネスに取り入れる効果を調査したことがあるとのこと。JTBが提供する旅やイベントというのも、キャンプの効果と近いものがあると感じています。その有用性を証明するような取り組みもSPBSさんと一緒にできたら面白いですね。
---JTB様、JTBコミュニケーションデザイン様、取材のご協力ありがとうございました!