
愛知県豊川市に拠点を置く、ひまわり農業協同組合様(以下、JAひまわり)。2024年春に総合集出荷センターを新設し、その管理棟にキャンピングオフィスを取り入れた交流スペース・アグリBASE「集(TSUDOI)」をオープンしました。
JAの集出荷施設に併設された交流スペースはどのような機能を果たしていくのでしょうか? 交流スペースにキャンピングオフィスを取り入れた狙いとは? オープンして間もないアグリBASE「集(TSUDOI)」の、今後の活用方法について話を伺いました。
お客様:ひまわり農業協同組合(JAひまわり)
総合集出荷センター 営農部 次長 牧野延全様
(担当:スノーピークビジネスソリューションズ HRS事業部 伴崇史)


東三河の中核的農業地帯・豊川を支える総合農協
---JAひまわりさんの概要を教えてください。
JAひまわりは、平成2年に愛知県豊川市と宝飯郡4町の5つの農協が合併して発足しました。農業者の生産活動を支援する営農指導や農産物を市場に出す販売事業をメインに、農業用資材を供給する購買事業、信用・共済事業などを幅広く行う豊川市内唯一の総合農協です。現在、正組合員(農家)は7,048人、准組合員(非農家)は28,875人に上ります。※2024年3月現在
豊川市は一年を通して温暖な気候、適量の降雨といった気候条件に恵まれ、多品目産地であることが特徴です。その中でも出荷量全国1位を誇るバラ、全国に先駆けて栽培技術を確立したスプレーマム(菊)など、花き関連は主力品目となっています。
また、市内5ヶ所で運営する農畜産物直売所の合計売上額が年間14億円を誇ることも特徴の一つ。これは、多品目生産が可能で直売所の品揃えが豊富な豊川ならではの強みです。

集出荷施設に組合員の交流スペースをつくりたい
---キャンピングオフィスを導入した背景をお聞かせください。
2024年4月に中部営農センター、東部営農センター、花き集出荷センターの3拠点の機能を統合した総合集出荷センターを新たに整備しました。新施設をつくるにあたって組合員にヒアリングしたところ、若手生産者を中心に「生産者同士が気軽に交流できる場がほしい」という要望が上がりました。
というのも、統合前の集出荷センターには交流スペースのようなものはなく、出荷作業に訪れた生産者の皆さんは、自動販売機の前で立ち話をするのが精一杯。夏は暑く、冬は寒く、コミュニケーションが弾む環境ではありませんでした。そこで、新設する総合集出荷センターの管理棟1階に交流スペースをつくることにしました。
交流のためのスペースですので、固苦しい会議室のような雰囲気ではなく、なるべく気軽に使ってもらえる空間にしようという構想がありました。以前、私の上司が愛知県岡崎市にあるスノーピークビジネスソリューションズさんのコワーキングスペース「Camping Office osoto Okazaki」を訪れたことがあり、osotoのように自然と交流が生まれる仕掛けを取り入れたいと考え、キャンピングオフィスの導入に至りました。

部会を超えて、生産者同士がつながる場に
---交流スペースをつくって実現させたかったのはどんなことですか?
交流スペースをつくったのは組合員の要望でもありましたが、私たち職員も課題を感じていました。
農協は品種・品目ごとの部会に分かれています。当該施設は17の部会が利用し、部会の中では情報共有が盛んですが、部会同士の横のつながりが多くはありませんでした。そのため、例えばスマート農業をうまく取り入れている部会と導入が進んでいない部会があるなど、新しい技術に関する情報共有が部会を超えて行われづらい環境だったのです。技術や情報の横展開が気軽にできるようになれば、豊川の農業はもっと面白くなるのではないかと考えていました。

可変性を生かしたフレキシブルなスペース
---キャンピングオフィスをどのように取り入れ、活用していますか?
交流スペースの使い方をしっかりと決めていたわけではなかったので、可変性の高いキャンプ用テーブルとチェアを並べたフリースペースを広くとりました。オープン当初は8人掛けを想定してテーブルとチェアを配置していましたが、今は2人掛けの席をつくったり、チェアを横並びにしたり、利用者の様子を見ながら配置をいろいろと試しています。イベントを開催する際は、テーブルとチェアを畳んで広いスペースを確保することも想定しています。
また、TUGUCA※を採用し、職員や組合員が集中して作業に取り組める集中スペースをつくりました。交流スペースがある管理棟の2階は職員の執務室になっていますが、電話がかかってきたりほかの職員から声をかけられたりすることも多く、周りを気にせず自分の仕事に専念できるスペースが欲しかったのです。
※TUGUCA…人数や空間規模・目的に応じて多様なカスタマイズが可能で、オフィスにも最適なスノーピークの家具。
焚火台を囲んでローチェアを設置した休憩スペースもあります。リラックス効果が高いようで、ここでは組合員同士が雑談している姿をよく見かけます。キッチン設備や庭もあり、キャンプ用品も揃っているので、今後は部会の懇親会やバーベキューなどもここでできたらと思っています。

理念との親和性が高く、年代問わず幅広い層の方々に好評
---キャンピングオフィスの反響はいかがでしょうか?
組合員はアウトドアに興味のある人が割と多いので、スノーピークのキャンプ用品が並んでいる雰囲気はとても好評です。皆さんアウトドアブランドとしてスノーピークはよく知っているのですが、オフィス空間を手がけていることは知らなかったようでびっくりしていました。私自身も、今回スノーピークのブランドコンセプトや事業内容を伺って、「自然」が事業のベースにあるという点で、JAとの親和性の高さをあらためて感じました。
意外だったのは、若手だけでなく年配の方々にも喜んでいただけたことです。気軽に利用していただいているのを見かけますし、「会議室で打ち合わせをすると尋問のようになるけれど、ここならざっくばらんに話ができるよね」と言っていただけました。
まだオープンして間もないですが、さっそく出荷作業の帰りに立ち寄って、ローチェアに座ってくつろいでいかれたり、コーヒーを飲みながら雑談したり、プレゼン資料をつくったりと、自由に使ってもらっています。夏休みには、子どもの自由研究の工作をしている親子もいました。「家だと狭いけど、ここなら材料を広げて作業できるから」と。組合員の皆さんに有効活用していただけてありがたいです。


交流スペースを活用し、地域農業の発展に貢献したい
---今後、交流スペースをどのように活用していくご予定ですか?
利用者の様子を見ながら、可変性を生かしていろいろなことを試していきたいです。まずは、本棚を設置して本好きの職員が選書した本を置く予定です。そうすれば、ただくつろぐだけでなくインプットの機会になりますし、より気軽に利用してもらえるのではないでしょうか。
また、交流スペースを利用する組合員はまだまだ限られていますので、間口を広げる施策として小さなイベントを随時企画していきます。例えば、コーヒーのハンドドリップ講座、カイロプラクターによる姿勢改善の講座など、組合員向けのイベントを開催して足を運んでもらうきっかけづくりをしていきます。
組合員同士の交流に留まらず、生産者と学生、生産者とベンチャー企業やスタートアップとのつながりも醸成していきたいと考えています。東三河地域は農業系のベンチャー企業やスタートアップの動きが活発ですが、組合員との交流機会は現状ほとんどありません。ベンチャー企業やスタートアップは地域農業を加速させるアイデアをもっていますが、生産現場の実態への理解が追いつかず、生産農家とのマッチングがうまくいかないことが多々あります。両者のつながりや相互理解を育むためにこの場所を活用したいと思います。
さらに、これから新しい農畜産物直売所がオープンする予定なのですが、そこにもキャンピングオフィスを導入した交流スペースをつくりたいと考えています。そちらは直売所に併設したスペースですので、直売所に出荷する生産者や地域の方々により広く利用していただける空間づくりができればと思っています。総合集出荷センターのアグリBASE「集」と新しい直売所にできる交流スペースの東西2つの拠点で、豊川の生産者や地域の方々の“元気づくり”を担っていきます。
