その名のとおり、日本の国土や社会インフラの開発を担ってきた日本国土開発株式会社様。現在はこれまでに培ってきた技術やノウハウを活用し、「先進の建設企業」として、再生可能エネルギー事業、不動産開発事業など新たな事業領域にも進出しています。更なる事業領域を拡大するため、2022年7月、宮城県仙台市泉区にアウトドア・リゾート施設をオープンさせました。
オープンに先立ち、この施設で同社初の試みとして行われた新入社員向けアウトドア研修。5日間のアウトドア研修を通じて、多くの新入社員を見てきた人事担当者にとっても、驚きの光景が広がりました。
お客様:日本国土開発株式会社 戦略本部 戦略部 人財戦略グループ 熊倉 有友希 様
(担当:スノーピークビジネスソリューションズ HRS事業部 吉冨 修平)
インフラ構築からリゾート運営まで、全国で事業を展開
ーーー日本国土開発さんの事業概要について教えてください。
日本国土開発は、東京都港区に本社を置き、東京証券取引所プライム市場に上場する総合建設業、いわゆるゼネコンとして国内外で事業を展開してきました。
大規模土地造成工事やトンネル、ダムなど社会インフラの構築を手掛ける土木事業、マンションやオフィスビル、学校、物流施設、食品工場など大規模施設の建築を手掛ける建築事業に加え、不動産開発や太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー運営などを展開する関連事業を、事業の3本柱としています。なお、弊社は、社会の課題・ニーズ対する事業創出の取組みを行っており、新たな事業モデルに挑戦し、「独自の事業領域」構築を目指しています。
今回、新入社員のアウトドア研修の舞台となった「IZUMI PEAK BASE(泉ピークベース)」も、日本国土開発の新規事業として、宮城県仙台市泉区泉ケ岳において開発したアウトドア・リゾート施設です。天然温泉施設やWi-Fi環境を充実させていることで、より快適なキャンプとワーケーションを提供し、法人向けのアウトドア研修サービスもスタートさせます。
オフィスでは生まれないアイデアに期待
ーーーなぜ新入社員向けにアウトドア研修を行うことになったのですか?
「IZUMI PEAK BASE(泉ピークベース)」の運営は弊社にとって新しい試みです。まずは弊社の新入社員にアウトドア研修やワーケーションを体験してもらい、施設やサービスの感触を得たい、という目的がありました。
これまで新入社員研修は都会のオフィスで行ってきましたが、座学ではどうしてもインプットが多くなりがちです。そこで、環境を変えて大自然の中で行うことで、オフィスでは出てこないアイデアが生まれるのではないか、次代に向けての柔軟な発想力を養ってほしいという期待もありました。
そして、ハプニングも含めて自然の中でしか味わえない体験からチームビルディングを学び、新入社員同期の絆を深めてもらいたい。配属先でもチームで動くことが多いので、アウトドア研修での学びを活用しながら成長してもらいたい、と考えたことも実施を決めた理由です。
一方、この施設の特徴としてアウトドアエリアでもWi-Fiが完備されていることから、研修の一部にパソコンやWEB会議が利用でき、実施可能なコンテンツが広がったため企画しやすくなりました。
メンバー間の絆の深さが、良いコミュニケーションに
ーーー研修の内容を教えてください。研修中、何か気づいたことはありますか?
研修では新入社員53名が7グループにわかれ、4泊5日にわたってアウトドアでグループワークを実施しました。初日がスノーピークビジネスソリューションズさんと連携したチームビルディング研修です。グループでテント設営に挑戦し、その後アウトドア会議、バーベキュー、焚火トークを行いました。
特筆すべき点は、テント設営の場面でメンバーを先生役と生徒役にわけて情報格差がある中で、先生役は現場を見ることができないというルールをつくり、あえてコミュニケーションに制限を設けた点です。
先生役は生徒役の言葉から現場の様子を想像しながら指示を出す。生徒役は現場の状況を先生役に説明しながらアドバイスを聞き出そうとする。このような役回りは、実際の建設現場でも施工管理者(先生役)、作業者(生徒役)などのポジションに合致しており、非常に興味深かったです。こうした状況設定のもと進めたところ、グループによって取り組み方が異なり、想像以上に設営の時間に差がつきました。
各グループには年齢も、職種も、性別も異なる多様な新入社員が参加しましたが、テント設営を早く終えたグループは、メンバーの仲が良いですね。メンバーがお互いに声を掛け合い、イメージをすり合わせたり、フォローし合ったりして、意思疎通する様子が見てとれました。
他方、先生役の指示を聞くだけで、言葉のキャッチボールが少なかったグループは、設営が進みません。当初はそれほどグループ間で差は出ないだろうと思っていたのですが、この結果を見てあらためてチームビルディングやコミュニケーションの重要性を実感しました。
発想のスケール感、多様さは今までにない手応え
ーーー屋内での研修とアウトドア研修では、違いはありましたか?
弊社の新入社員研修では、毎年一つのテーマについてグループ内で話し合い、最後に社長をはじめとする役員に事業プランの提案を行います。今年は、「日本国土開発独自の新しいまちおこし~独自の技術や強みを生かしながらどのように新規事業創出と地方創生を果たすか」というテーマのもと、議論してもらいました。
最終日、7グループの発表を聞いたのですが、日本の枠にとどまらない壮大なスケールの事業プランを提案してきたグループがあり、驚かされました。もちろん、毎年テーマが異なるので一概には言えませんが、大自然の中で考えた影響があるのかもしれません。
例年、提案内容が重複するグループが出ていたのですが、今年はすべてのグループが異なるアイデアを提案し、すばらしいと思いました。考え方に偏りが生まれなかったという点で、自然の中でストレスなく、より自由に、より柔軟に考える環境が提供できていたと手応えを感じました。
困難を乗り越える時間が絆を深める
ーーーアウトドア研修ならではの効果や魅力は感じられましたか?
オフィスは常に快適で何の不便もありません。ところが、自然の中では雨が降ったり、虫が出たりして、思わぬ変化を、力を合わせて乗り越える時間があります。だからこそ、いろいろな会話が生まれて助け合う心が芽生え、協力し合う。そうしたきっかけが多くあるのがアウトドア研修の魅力です。最初は何となくギクシャクしていたのに、最終日にはとても仲良くなっている。そんなグループの様子の変化もわかりました。
特に、夜の焚火トークは本音を語り合える時間となり、同期との関係性がより深まったようです。部長や課長も焚火トークに参加し、自分たちがどんな思いでこの会社に入り仕事をしてきたか、という話をすると、新入社員たちも興味津々で次々に質問を投げかけていました。新入社員同士もそうですが、上司との距離感も、焚火トークで、一気に縮まったのではないでしょうか。
個人的に印象に残ったのは、研修中、予定のルートを外れたときのこと。ある新入社員が道に捨てられた空き缶を自分から拾い始め、「こういう行動もできるのか」とオフィスだけにいてはわからない一面が見えて、それがとても良かったです。周りの社員たちもその姿を見て一緒に拾い始め、良い影響が広がっていく光景にも心打たれました。
研修後、社員の積極性にも変化が
ーーー新入社員の皆さんの反応や感想はいかがでしたか?
新入社員の反応は上々でした。
「コンクリートのビルの中より、広大な自然の中でアイデアを出せて本当に良かった」
「自然にふれながら仕事をする経験ができた」
「グループワークを通じて組織で行動する重要性がわかった」
「会議室での研修よりもストレスを感じなかった」など、好評の声がたくさん届きました。
アウトドア研修後のアンケートでも、「自分の感情を適切に表現できる」「発想が広がる」という項目で、約95%の高評価を得ました。特に「発想が広がる」については、研修前後で比較すると大きく評価が上がり、時間が経っても高い水準をキープしています。
「何かできることはありますか」と積極的に声をかけてくれる新入社員も増え、成長が感じられて嬉しかったですね。
なお、アウトドア研修中、新入社員は各自パソコン作業も行いましたが、Wi-Fiを完備したオフィス内と同等のweb環境のもと、ストレスなく進めることができたようです。
現状に働きかけ、より良い未来をめざせる人財へ
ーーー研修について今後の展望がありましたら、お聞かせください。
今回は新入社員研修のため大規模な展開となりましたが、とても効果を感じたので、もう少し小規模でマネジメント層によるアウトドア研修を行ってはどうか、と検討した結果、2022年7月、役員研修も実施しました。普段オフィスでやりとりされる役員間の議論も、自然のなかでは役員がよりリラックスした表情で活発な意見交換がなされていたことが印象的でした。
役員が滞在したコテージも快適で、東京オフィスにいる役員、テレワークの役員とともに、コテージにいる役員がweb会議に出席した際も、最新のインフラ整備により距離を感じずコミュニケーションが取れていたと思います。非日常を楽しみながら仕事ができるテクノロジーと五感に刺激を与える自然が融合したハイブリッドな場所だからこそ、いろいろなスタイルで仕事に向き合うことができると実感しました。
組織の中にいるとどうしても固定観念にとらわれて、特に年齢が上がるほど、既存のやり方に固執しがちです。ただ、「これまでのやり方にとらわれるな」と弊社社長もよく言うように、より良くするためにはどうしたらいいか、組織が成長するためにはどんな取り組みが必要なのかなど、常に変化を求めていく姿勢は重要だと思っています。
現状に満足していては自分自身も会社も成長が止まってしまいます。人事担当としては、アウトドア研修が柔軟な発想力や、いまの現状に自分がどう働きかければより良くなるか、という姿勢を養う場になれば、と期待しています。
−−−日本国土開発様、取材のご協力ありがとうございました!