世界中で愛されるモーターサイクルやマリン製品をはじめ、多様な製品を生み出し続けるヤマハ発動機株式会社様。その中でCX事業部は、補修部品・アクセサリーの企画開発から、サプライチェーンマネジメント、パーツカタログ制作までアフターセールス領域を担い、「もっとヤマハが好きになる。」を事業のタグラインとして、お客様のヤマハライフを長く支え続けています。
300名規模の多様な人材が働くこの事業部では、2024年から部門横断の「つながり」を強めるための改革が本格的に始まりました。
その動きを加速させる重要施策として実施されたのが、1泊2日のアウトドア研修「Crossing Camp」です。各グループの代表が手挙げ制で参加し、25名でのコミュニケーション活性とアイデア創出を図りました。
今回は、研修を企画したプロジェクトリーダーに、実施の背景や得られた効果、その後の変化についてお話を伺いました。
お客様:ヤマハ発動機株式会社 カスタマーエクスペリエンス(CX)事業部
企画戦略部 事業企画グループ 北岸 由衣様
SCM部 在庫供給管理1グループ グループリーダー 松田 卓也様
マーケティング推進部マーケティング第2グループ 藤森 久留海様
(担当:スノーピークビジネスソリューションズ CAMPING OFFICE事業部 大塚 美樹)
専門性の高い組織だからこそ求められた「横のつながり」
---ヤマハ発動機さんの事業概要を教えてください。
CX事業部は、ヤマハ発動機のアフターセールス領域を担う事業部として、製品を購入いただいた後の体験価値を高める役割を担っています。部品やアクセサリーを通じて製品を長く、安心して使っていただくことに加え、グローバルに広がる市場や拠点と連携しながら、事業の拡大や顧客満足度向上に取り組んでいます。
事業部内には、アフターセールスマーケティング、サプライチェーンマネジメント、関連制作業務など、専門性の異なる複数の部門があり、それぞれが密接に関わりながら業務を進めています。そのため、部門単位の最適化だけでなく、横断的な連携や情報共有が欠かせない組織でもあります。
近年は事業環境の変化や働き方の多様化を背景に、従来のやり方を見直しながら、より柔軟で風通しの良い組織づくりが求められてきました。今回のアウトドア研修は、そうした課題意識のもと、部門や立場を越えて人と人がつながる関係性の土台をつくることを目的に、企画された取り組みでした。
オフィス改革後も残った課題――なぜ「話しづらさ」は解消されないのか
---アウトドア研修を実施するに至った背景を教えてください。
私たちの事業部は、2024年にフリーアドレス化を実施し、大規模なオフィスリノベーションを行いました。アンケート結果を見る限り、快適性や働きやすさ、柔軟性などは軒並み向上していました。
しかし、唯一ほとんど変わらなかった指標がありました。それが「Open項目=話しやすさ/話すきっかけ」でした。
部門が5つに分かれているため、歴史的にも「横のつながり」は弱く、自然な接点が生まれづらい状況でした。同じフロアにいながら、「誰が何をしているのか分からない」「お互いに知らないので声をかけづらい」という声が根強く残っていたのです。 これまで各部門がそれぞれ最適化して動いてきましたが、部門ごとの「当たり前」や過去からの慣習が定着していて、事業を拡大していく未来に向けて今のままでは限界があります。
「オフィスは良くなったけれど、関係性が変わらない」――この課題が、私たちを次の一歩へと駆り立てました。
体験会で実感したアウトドア研修の効果――関係性と心理的安全性を一気に変える力
---なぜアウトドア研修という選択肢に行き着いたのでしょうか。
スノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)さんの研修を知ったとき、直感的に「これはうちに合う」と思いました。ヤマハ発動機にはアウトドア好きが多く、自然の中で取り組む活動は相性が良いと感じていました。
実際に体験会に参加したとき、初対面の方と手をつないだり腕を組んだり、日常の会社生活ではありえない関わり方をしました。最初はぎこちなくても、数十分で距離が一気に縮まるのを実感したんです。「これは、うちの事業部の関係性も変えられる」と確信した瞬間でした。
焚火を囲むだけで表情が柔らかくなり、役割や肩書など仕事上の関係性を外した「人と人」として、自然体で話せる。屋内のオフィスでは生まれにくい「心理的安全性」が、外に出ることで一気に確保される。この体験に基づく感覚が、アウトドア研修を迷わず選ぶ決め手になりました。
研修名の「Crossing Camp」は、部門を越えて代表者を混ぜ合わせることで、火種から炎を育て、事業部全体へ火を広げるというイメージから生まれました。
参加者は集まるのか?――業務外研修のハードルを超える「つながり」へのニーズ
---実施する上で、どのような障壁がありましたか。
研修前の最大の不安は、25名という参加枠に人が集まるかどうかでした。業務とは直接的には結びつかない取り組みであるため、興味を持ってもらえるかは未知数でした。まずは事業部全体での理解促進を図るため、外部講師講演と部長対談のセミナーを設定し、コミュニケーションと共創の重要性について発信しました。
「なぜ今部門のつながりが必要なのか」を丁寧に説明し、焚火を囲む意味、火種を広げる狙いを伝えたところ、多くの社員が真剣に耳を傾けてくれました。仕事起点ではなく“人”起点の活動によって、多様な共創が事業部内の多くの業務領域で起こる状態をつくり、組織風土を根本から改革することが必要だ――そんな想いを共有しました。
セミナー後、思っていた以上に共感を得られた実感がありました。「話すきっかけがほしい」という声が特に多かったです。こうして、参加者それぞれが研修の意図や価値を自分なりに受け止めた状態で、研修は順調にメンバーが集まり、期待感を持って実施されることになりました。
初対面同士が打ち解けた焚火の夜――アウトドア研修で生まれた「人の心が通う瞬間」
---当日の様子で印象に残っているシーンはありますか。
初日から大きな変化が見られました。特に焚火を囲んだセッションは、今でも強く記憶に残っています。
普段のオフィスではあまり表情を変えない方が、焚火の前では本当に楽しそうに笑っていたんです。「こんな表情をするんだ」と私自身が驚く場面が多くありました。普段の役割や肩書、気づけば心の中にある距離――そうしたものが焚火の前では自然に外れていく。「人としてつながる」という感覚が生まれていたように思います。
「参加者のことが好きになりました」という言葉が出たとき、「ああ、本当に心が開いたんだ」と実感しました。1日目の夜は、バーベキューや焚火、ゲーム、ちょうど入籍された方のお祝いケーキなど、自然と一体感が高まる時間が続きました。
「はじめて素の姿を見られた」――そんな瞬間が至るところで生まれていて、一歩踏み込んだ関係性が形になっていくのを感じました。この一夜で、参加者同士は「仕事で関わる人」から「仲間」へ変わり始めたのです。
研修発のアイデアが組織に広がる――アウトドア研修から生まれた100名規模の自走企画
---研修からその後まで、どのような変化が起きたのでしょうか。
2日目は「無責任から始めよう」というテーマでアイデア創出を行いました。否定せずにまず言葉にする「Yes, And」を徹底し、思いつきを自由に重ねていきます。ここで生まれたアイデアは、研修後の「1ヶ月間のチャレンジ」として実行されることになっていましたが、実際には1ヶ月どころか継続して自走し続ける結果となりました。
5チームの行動化率は100%です。たった1泊2日でも濃密なプログラムを通して、本音で語り合い一緒にチャレンジしようと思える関係性がしっかりと築かれていました。全員が日常のオフィスに戻っても関係性を保ち、アイデアを行動に移して成果を発表。その後も自ら楽しんで継続してくれています。
特に大きな反響があったのは「癒しコーナー」の取り組みです。最初は「ペットの写真を貼ろう」という小さなアイデアでしたが、噂を聞きつけた海外拠点の社員からも投稿が来て、多くの社員が参加してくれたのは本当に驚きでした。廊下の掲示板がペット写真で埋め尽くされ、初対面同士が「この子可愛いね」と自然に雑談を始める姿が見られました。 その他にもおやつ会や運動系イベントなども含めて、総数100名以上が参加する社内企画のムーブメントが生まれました。
これは、アウトドア研修で「顔を知っている」「話しかけやすい」という関係性が生まれたからこそ実行できたアクションでした。
数値で見えたアウトドア研修の成果――コミュニケーション改善と業務スピード向上
---効果測定の結果について教えてください。
研修後のオフィスアンケートでは、コミュニケーションに関する指標に明確な変化が見られました。
・「話すきっかけ」 3.4 → 3.7
・「話しやすさ」 3.7 → 3.9
と、いずれも改善しています。
アウトドア研修の参加者満足度は4.75/5.0と非常に高く、事業部のタグラインである「もっとヤマハが好きになる」とのつながりを感じた人は96%に達しました。研修での協働体験が個人の実感としてポジティブに受け止められていたことがうかがえます。
また、実際の業務面でも、「キャンプで会った人には声をかけるハードルが下がった」「メールで気軽に相談できるようになった」といった声が多く聞かれました。研修を通じて顔や人となりを知ったことが、日常のやり取りにおける心理的な距離感に変化をもたらしたようです。
こうした変化とあわせて、「問題解決のしやすさ」の指標も3.5 → 3.9へ改善しました。コミュニケーションが円滑になったことで、相談や連携が早まり、結果として業務の進めやすさやスピードといった生産性にも良い影響が出ていると感じています。
アウトドア研修が組織文化を動かした――「関わりの火種」が部門全体へ広がった理由
---最後に、今回のアウトドア研修の価値をどのように捉えていますか。
私たちは「Crossing Camp」を「火を育てる場」として企画しました。そして実際に見たのは、焚火を囲みながら一人ひとりの存在や言葉が、ひとつの炎のように自然と重なっていく姿でした。
研修でつながった人たちが、熱量を帯びたチームとなって自主的に動き、オフィスでの取り組みが広がり続けている。この共創の広がりは、オフィスという「ハード」だけでは決して生み出せなかったものです。
関係性が変われば、組織は変わります。そして、小さなアイデアや行動が文化を変えます。今回のアウトドア研修は、その原点となる体験だったと思っています。

