テレワークの課題は“出社”で解決できるのか?働き方の本質を探る
はじめに
少子高齢化社会を見据えた、働き方改革が叫ばれて早10年。テレワークはコロナ禍も相まって一気に普及したものの、最近ではフルリモートからハイブリッドワーク、あるいはフル出社など、会社の方針によってオフィスへ回帰する企業も増えています。一体どうしてなのでしょうか?
その背景には、コロナ禍のフルリモートな働き方によって浮かび上がった「人と人とのつながり」の希薄化や、組織としての一体感の低下、若手育成の難しさなど、さまざまな課題があります。こうした状況に直面する中で、企業の経営層や人事・総務部門は、改めて「働くとは何か」「組織にとっての“場”とは何か」を問い直す必要に迫られています。
本コラムでは、テレワークと出社、それぞれの働き方が持つ意味や価値を見つめ直しながら、これからの組織づくりに役立つヒントや視点を探っていきます。
出社が再評価される背景
テレワークによる柔軟な働き方や効率性が評価される一方で、出社の価値も見直されています。特に、偶発的な雑談や対話のような「対面型のリアルなコミュニケーション」、空気感の共有といった「非言語的なコミュニケーション」の重要性が再認識されているのです。組織文化の醸成や信頼関係の構築には、やはり“場”の力が欠かせません。
しかし、出社すればすべてが解決するわけではありません。物理的に同じ空間にいても、心が通わなければ意味がない。だからこそ、出社の“質”が問われているのです。
出社だけでは解決できない本質的な課題
出社しても、黙々と作業するだけではテレワークと変わりません。むしろ、通勤の負担やオフィスの制約が加わる分、ストレスが増すこともあります。重要なのは、出社すること自体ではなく、出社して「何をするか」です。
本質的な課題は、「人と人との関係性の質」にあります。信頼、共感、対話──これらをどう育むかが、働き方の鍵を握っています。
“出社”を価値あるものにするために必要な視点
出社に価値を持たせるためには、まず「なぜ集まるのか」という目的を明確にすることが重要です。たとえば、偶発的な雑談や対話を通じてチームの関係性を再構築したいのか、あるいは共創やアイデア創出の場として活用したいのか。目的によって、必要な時間・空間・関係性の設計は大きく変わってきます。
また、物理的な“場”の力も見逃せません。たとえば、非日常の空間や自然環境の中では、肩書きや立場を超えた対話が生まれやすくなります。
私たちスノーピークビジネスソリューションズ(SPBS)では、こうした“場”の力を活かした空間づくりを通じて、組織内の対話や関係性の質を高める取り組みを行っています。たとえば、自然の中でのワークショップや、焚火での対話など、日常とは異なる環境での体験が、働く人の心を開き、組織に新たな気づきをもたらします。
さらに、出社の場においても心理的安全性の確保は不可欠です。発言しづらい空気や評価への不安があると、せっかくの対話の機会も形骸化してしまいます。安心して話せる空気づくりこそが、出社の価値を高める鍵となるのです。
テレワークと出社の“ハイブリッド”をどう設計するか
テレワークと出社、どちらか一方に偏るのではなく、両者の“いいとこ取り”をする設計が求められています。ここで重要なのは、出社を「管理のため」ではなく、「価値創出のための場」として再定義することです。
たとえば、「この日は対話のために集まる」「この日はチームで未来を描くために集まる」といった目的を共有した上での出社が、社員の納得感と参加意欲を高めます。逆に、目的のない出社はかえって生産性を下げてしまう可能性もあります。
また、働く人の“自発性”を引き出すためには、オフィスそのものを「行きたくなる場」にする工夫が必要です。SPBSのオフィス環境においても、スノーピークのアウトドアギアや人工芝、自然音響を組み合わせることで、自然の心地よさを感じられる空間づくりを行っています。たとえば、社員が豆を挽きながら会話を楽しむコーヒースタンドや、焚火を囲むように設えた共有スペースなど、日常の中に自然と人が交わる“場”を設計しています。こうした工夫が、社員の自発的な出社を促し、日々の中に対話や気づきを生み出すきっかけとなっています。
最後に、ハイブリッドワークを設計するうえで私たちが持つべき問いは、「この仕事はどこでやるのが最も効果的か?」「このチームでどのような関係性を築きたいのか?」「この場で何を感じ、何を共有したいのか?」といった、他者と共に働くことのそもそもの意味や価値に立ち返る問いです。
テレワークか出社か、という二項対立ではなく、働く人の“ありたい姿”を起点に、柔軟で創造的な働き方をデザインしていくことが、これからの時代に求められているのではないでしょうか。
おわりに
働き方の正解は、ひとつではありません。大切なのは、組織や個人が「どのような働き方を望むのか」「どのような関係性を築きたいのか」を対話しながら見つけていくことです。
私たちは、自然と人、人と人がつながる“場”を通じて、働く人の自発性と創造性を引き出すお手伝いをしています。もしご興味があれば、サービス資料もご覧ください。働き方のヒントが、きっと見つかるはずです。

