来期の人材育成計画や研修予算の検討に、頭を悩ませる季節ではないでしょうか。「研修は行っているものの、現場の行動がなかなか変わらない」という壁にぶつかる企業も、少なくないようです。
こうした悩みへのアプローチとして注目されているのが「体験型研修」です。
厚生労働省の調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%にのぼるとされており、多くの企業がこのような課題に向き合っています。(※1)
この記事では、体験型研修の特徴と種類、導入事例、来期の研修計画と予算の進め方を紹介します。
「知る」から「動ける」へ。人材育成の成果を変える「体験型研修」
人材育成とは?体験型研修の役割と位置づけ
人材育成とは、企業の目標達成に貢献できる人材を、計画的に育てる取り組みです。
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・ 人材育成:組織の目標や求める人材像を踏まえ、社員の能力やスキルを伸ばすこと
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・ 人材開発:社員の能力を引き出し、中長期的な成長や組織の成果につなげること
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・ 人材教育:業務に必要な知識やスキルを習得できるよう、教育の機会を提供すること
手法は、一般的に次の3つに分けられます。
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・ OJT(On-the-Job Training):職場で実務を通じて学ぶ
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・ Off-JT(Off-the-Job Training):職場を離れて、研修などで学ぶ
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・ 自己啓発:社員が自らの意思で学ぶ
体験型研修とは、受講者が実際に体験し、その体験を振り返って、仕事での行動につなげていくOff-JTの研修です。「やってみて、気づき、持ち帰る」流れを設計に組み込んでいる点が特徴です。
来期の計画前に確認したい、人材育成の現状と課題
来期の計画を立てる前に、人材育成の現状を数字で押さえておきましょう。厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」(※1)では、次の結果が示されています。
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・ 教育訓練費用(Off-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業:54.4%
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・ Off-JTに支出した費用(労働者1人当たりの平均額):2.0万円(令和6年度実績)
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・ 能力開発や人材育成に何らかの問題があると回答した事業所:80.1%
研修で得た学びが現場での行動につながらない要因として、次のような課題が挙げられます。
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・ 研修で学んだことを、日々の業務で実践する機会が少ない
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・ 研修の内容を、現場の実態に合わせる調整が難しい
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・ 人材育成にかけられる時間や人手が限られている
研修の効果は、知識の習得だけでなく、行動や意識の変化も踏まえて判断することが大切です。
体験型研修とは?講義型との違いと、学びを行動につなげる仕組み
体験型研修は、講義型研修と学び方の設計が異なります。
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・ 講義型研修:講師の説明を聞いて、知識や考え方を体系的に理解する。実践は受講後の職場で行うことが多い。
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・ 体験型研修:ロールプレイや協働作業などを自ら体験し、振り返りを通じて学ぶ。気づきを自分の言葉で整理することで、実際の行動につなげやすくなる。
どちらが優れているということではなく、目的に応じた使い分けが大切です。知識のインプットや共通理解を図るなら講義型、行動変容や関係性の構築を目指すなら体験型というように、目的に応じて使い分けることが大切です。
経験学習サイクルとは
体験型研修の設計に活用できる考え方の一つに、デイビッド・コルブが提唱した「経験学習モデル」(※2)があります。学びは、次の4段階のサイクルで深まるとされています。
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1. 具体的経験:実際にやってみる
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2. 内省的観察:体験を振り返り、何が起きたかを見つめる
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3. 抽象的概念化:振り返りから、自分なりの考え方や教訓を導く
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4. 能動的実験:得た学びを、次の場面で試してみる
体験型の学びを確実なものにするためには、実体験とセットで「内省(リフレクション)の時間」を十分に確保することが欠かせません。自分の行動を客観的に見つめ直して言語化するプロセスこそが、実際の職場での行動変容を引き出す鍵となります。
体験型研修の種類と、階層別の選び方
体験型研修には、さまざまな形式があります。
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・ ロールプレイ:場面を設定し、役割を演じながら対応方法を学ぶ
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・ ケーススタディ:事例をもとに、課題の分析や解決策の検討を行う
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・ シミュレーション:模擬的な状況で、判断や対応を実践する
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・ フィールド型:屋外などで、チームでの協働作業や対話を行う
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・ 越境学習・地域課題型:普段の職場や業務を離れ、異なる組織や地域の課題に取り組むことで、新たな視点を得る
形式を選ぶときは、「誰の、どんな行動を変えたいのか」を起点にすると、人材育成の目的とずれにくくなります。
新入社員:同期との関係性を築く
入社して間もない時期は、基礎的なスキルに加え、同期や職場との信頼関係づくりが土台になります。協働作業や対話で互いの人柄を知る体験は、配属後の相談しやすさにもつながります。
中堅社員:役割を見つめ直し、リーダー経験を積む
後輩や他部署との関わりの中で、自分の役割を見つめ直す機会が向いています。チームで課題に取り組むプログラムなら、リーダーシップや調整力を実践的に磨けます。
管理職:対話型のマネジメントを体験する
1on1や目標設定の面談をロールプレイで体験し、自分の関わり方を振り返るプログラムが有効です。日常のマネジメントに直結する学びが得られます。
体験型研修の具体例|アウトドア研修の内容と特徴
体験型研修の一例として、アウトドア研修を紹介します。キャンプ場などの屋外で、対話と協働体験を通じて関係性を築きます。
プログラムは「議論・対話・会話」の切り口をバランスよく設計し、「相手の背景を理解する」「自分の考えを場に出す」「最も効果的な選択を一緒に行う」の3ステップを大切にしています。体験・振り返り・持ち帰りは、次のように組み込まれます。
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体験:チームでのテント設営などの協働作業、焚火を囲んだ対話
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内省(リフレクション):互いのフィードバックを通じて、自分の関わり方を見つめ直す
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持ち帰り:気づきを言葉にし、職場で実践する行動目標を設定する。必要に応じて、報告書やフォローアップで実践を支援する
アウトドア研修は、日常から離れた開放的な環境だからこそ、普段は見えにくいお互いの価値観や本音での対話が生まれやすくなります。そこで得た気づきを、チームの関係性構築へとつなげていくことが、最大の価値といえます。
導入事例|アウトドアの開放感の中で自分を語り、キャリアを描く。
三菱電機株式会社様
三菱電機株式会社様では、部門初のアウトドア研修を、入社7年目の中堅社員向けに実施しました。
従来の階層別研修は、グループ討議と発表が中心でした。研修のあり方を見直す中で、今回は業務課題ではなく、一人ひとりのキャリアに焦点をあてた内容で進めました。
1日目は、社会人になってからのモチベーションの推移を折れ線グラフで振り返りました。2日目は5年後の姿を描き、最後に自分の想いを漢字二文字で宣言しています。執行役員も参加した焚火トークでは、同期同士が打ち解け、悩みや経験を語り合う場となりました。
事後アンケートでは「非常に良かった」という声が多く、運営側も「これまでの研修では表に出なかった個々の意見を聞けた」と振り返っています。体験を通じて本音を語り合い、自分のキャリアを振り返り、5年後のビジョンを描く。研修での気づきを今後の行動につなげる設計が、この事例のポイントです。
詳しい内容は、(アウトドアの開放感の中で自分を語り、キャリアを描く。)の記事で紹介しています。
人材育成の研修計画と予算組みの進め方|5ステップ
人材育成の計画と予算は、次の5つのステップで整理すると進めやすくなります。
1. 課題と対象者を特定する
経営目標と現場の課題をもとに、「誰の、どんな行動を変えたいのか」を明確にします。
2. 目的と目標を設定する
研修前に「何をもって成功とするか」を決めておきます。効果測定には、反応・学習・行動・成果の順に確認すると良いでしょう。(※3)
3. 手法を組み合わせる
OJT、Off-JT、自己啓発を目的に合わせて組み合わせます。屋外で行う体験型研修は、季節や天候、施設の予約状況に左右されるため、日程には余裕を持たせておくと安心です。
4. 予算を見立てる
厚生労働省の調査では、Off-JTに支出した費用は、労働者1人当たり平均2.0万円(令和6年度実績、※1)でした。平均額のため、実際の費用は研修の形式や日数、会場によって変わります。
見積もりを比較する際は、金額だけでなく、振り返りやフォローアップの有無も確認しましょう。助成金を活用する場合は、年度によって要件が変わることがあるため、厚生労働省の最新情報をご確認ください。
5. 効果測定とフォローを設計する
受講直後のアンケートに加え、上司との1on1で行動計画を共有し、数か月後に振り返る流れをつくります。
体験型研修に関するよくある質問
Q. 体験型研修は、座学の研修と何が違いますか?
座学の研修は、講義を通じて知識や考え方を体系的に学ぶ形式です。体験型研修は、体験と内省を通じて、行動や関係性の変化につなげる形式です。
Q. 体験型研修の効果は、どのように測ればよいですか?
満足度だけでなく、職場での行動がどう変わったかまで確認することが大切です。研修前に指標を決め、受講直後のアンケート、上司との1on1、数か月後の振り返りを組み合わせると、変化を捉えやすくなります。
Q. 研修の予算は、どのように見積もればよいですか?
厚生労働省の調査(※1)にあるOff-JT費用の平均額は、一つの目安になります。実際の費用は対象者数、形式、日数、会場によって変わるため、複数の案で見積もりを取り、フォローアップまで含まれているかを比べて検討してください。
まとめ|人材育成に体験型研修を取り入れ、来期の計画につなげる
人材育成では、知識の習得に加えて、学びを行動に変える設計も大切です。体験型研修は、体験し、振り返り、職場に持ち帰るという流れを組み込んだOff-JTです。
目的に応じて研修手法を組み合わせ、行動や関係性の変化を促したい場面で体験型研修を活用することが、人材育成の効果を高めるポイントです。
来期の計画では、課題の特定から効果測定までを一連で設計してみてください。
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スノーピークビジネスソリューションズでは、自然の中での対話や協働体験を取り入れたアウトドア研修を提供しています。新入社員から管理職まで、育成の目的や対象者に合わせたプログラムをご提案します。
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参考文献
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※1 厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」(令和8年7月31日公表)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
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※2 Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice Hall.
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※3 Kirkpatrick, D. L., & Kirkpatrick, J. D. (2006). Evaluating Training Programs: The Four Levels (3rd ed.). Berrett-Koehler.

