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VUCAからBANIへ——心理的安全性は「場」からつくれる

VUCAからBANIへ——心理的安全性は「場」からつくれる

先の見えない変化に、組織はどう向き合えばよいのでしょうか。

VUCA(ブーカ)」は、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性という、予測困難な時代の「状況」を表す言葉として広く知られてきました。

 

一方、近年注目されているのが「BANI(バニ)」という概念です。米国のフューチャリスト、ジャメイス・カシオ(Jamais Cascio)氏が提唱したもので、変化の激しい世界で起きる「脆さ」や「不安」、「非線形」、「不可解さ」に目を向ける視点です。

VUCAが「どのような状況なのか」を捉えるものだとすれば、BANIは「そのような世界のなかで、人や組織に何が起きているのか」を考えるきっかけになります。

 

そこで重要になるのが、変化のなかでも一人ひとりが安心して意見を言える組織の土台、「心理的安全性」です。

本記事では、VUCAとBANIの違いを整理しながら、心理的安全性を「人の意識や行動」だけでなく、「場や環境」という視点からどう支えていけるのかを、実際のオフィス空間デザインの導入事例とともに解説します。 

VUCAとは何か

VUCAはもともと、冷戦終結後の複雑化した国際情勢を表すため、アメリカの軍事・安全保障分野で使われ始めた言葉です。

その後、経営や組織開発の分野にも広がり、現在では、変化が激しく将来を予測しにくい時代を表すキーワードとして広く知られています。

 

  • ・ Volatility(変動性):市場や技術、価値観などが急速かつ大きく変化すること

  • ・ Uncertainty(不確実性):過去の経験やデータでは、将来を予測しづらいこと

  • ・ Complexity(複雑性):さまざまな要因が絡み合い、単純な因果関係で説明できないこと

  • ・ Ambiguity(曖昧性):一つの事象に対して複数の解釈が成り立ち、明確な正解が定まらないこと

 

ただし、VUCAはあくまで「状況」の特徴を捉える概念であるため、変化のなかで働く人が感じる不安や、先の見えないことへの心理的な負担までは、十分に捉えきれません。

 

そこで、もうひとつの視点として知っておきたいのが「BANI」です。

VUCAの先にある「BANI」とは

BANIは、米国のフューチャリスト、ジャメイス・カシオ(Jamais Cascio)氏が2018年に考案し、2020年に自身の論考「Facing the Age of Chaos」で公に紹介した概念です※1。

 

  • ・ Brittle(脆さ):一見強固に見える仕組みが、ささいなきっかけで急激に崩壊しうること

  • ・ Anxious(不安):選択肢が多く、正解が見えないことによって生じる漠然とした不安感

  • ・ Non-linear(非線形):原因と結果が単純な比例関係にならず、小さな出来事が予測を超える大きな影響を及ぼすこと

  • ・ Incomprehensible(不可解):出来事の背景や理由が複雑に絡み合い、論理的に理解しきれないこと

 

カシオ氏は、気候変動やパンデミック、社会的分断など、複雑化する現代の状況を理解するための視点としてBANIを提示しました。

VUCAとBANIの違いは、視点の置きどころにあります。

 

VUCAが「変化する状況の特徴」を捉えるのに対し、BANIは、そうした世界のなかで起きる脆さや不安、非線形、不可解さに目を向けます。なかでも「Anxious(不安)」は、変化のなかで働く人の心理状態とも関わるキーワードです。

 

「先が見えない」「何が正解か分からない」「間違えたらどうしよう」

そうした不安が強くなると、「こんなことを言って大丈夫だろうか」と考え、疑問や懸念を周囲に伝えにくくなります。

 

だからこそ、BANIが示すような変化の激しい環境では、変化そのものへの対応だけでなく、変化のなかで人が安心して考え、発言できる環境にも目を向ける必要があります。

なぜBANIの時代に「心理的安全性」が重要なのか

BANIが示す「Anxious(不安)」に、組織はどう向き合えばよいのでしょうか。

本記事では、その土台のひとつとして「心理的安全性」に注目します。

 

心理的安全性とは、組織行動学者エイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念で、チームのなかで自分の意見や懸念、失敗などを共有しても、拒絶されたり罰せられたりしないと信じられる状態を指します※2。

 

Googleが自社のチームを分析した「Project Aristotle」では、チームの有効性に関わる5つの重要な要素が整理され、そのなかでも心理的安全性が最も重要な要素として挙げられました※3。

変化が非線形(Non-linear)で、その背景も理解しにくい(Incomprehensible)状況では、誰も常に「正解」を持っているとは限りません。

 

だからこそ、経営層やマネージャーだけでなく、現場のメンバー一人ひとりが違和感や懸念、小さな変化に気づいたとき、それを率直に発言できることが重要になります。

 

発言しやすい環境があれば、組織は現場の変化を早く捉え状況に応じて考え方や行動を変えていくことができます。

では、心理的安全性を高めるためには何ができるのでしょうか。 

 

マネジメントやコミュニケーション、研修などの取り組みに加えて、もうひとつ目を向けたいのが「」です。

 

心理的安全性についての詳しい内容は「心理的安全性のつくり方|意識だけでなく、「場」から変える」の記事でも説明しています。

心理的安全性は「場」からもつくれる

心理的安全性は、オフィスのレイアウトや家具を変えるだけで生まれるものではありません。

 

一方で、人がどこで、どのように人と関わるかは、コミュニケーションのしやすさに影響します。
たとえば、気軽に話せる場所があれば、ちょっとした相談や意見交換が生まれやすくなります。

 

だからこそ、心理的安全性を高めるには、マネジメントやコミュニケーションなど「人への働きかけ」だけでなく、それを支える「場や環境」にも目を向けることが大切です。

場づくりの方法を、「非日常の場」と「日常の場」という2つの視点から紹介します。

1.非日常の場をつくる「アウトドア研修」

ひとつは、焚火を囲んで語り合ったり、青空の下でチームと対話したりするアウトドア研修」です。

普段のオフィスを離れ、自然のなかでチームで活動することで、日常の仕事では見えにくいお互いの考え方や行動に触れる機会が生まれます。

アウトドアでは、チームで協力して課題に取り組んだり、焚火を囲んで対話したりと、普段の会議や業務とは異なる体験を共有できます。

 

こうした体験を通じて、普段は話す機会の少ないメンバー同士が互いの考えや価値観を知り、相手を理解するきっかけや、チームで協働するための関係性をつくっていきます。

 

さらに、体験したことを振り返り、日常の仕事やチームのあり方について対話することで、「楽しかった」で終わらない、日常の行動やコミュニケーションへとつなげていきます。

2.日常の場を変える「オフィス空間デザイン」

もうひとつは、日常のオフィス環境そのものを見直すアプローチです。

固定された席だけでなく、集中する場所気軽に話せる場所複数人で議論できる場所など、目的に応じて働く場所を選べる環境をつくることで、コミュニケーションの選択肢を広げることができます。

 

また、自然素材や植物、自然光などの要素を取り入れることで、リラックスして過ごしやすい環境をつくることもできます。

重要なのは、オフィスを「働くための場所」だけでなく、「人と人が関わる場所」として捉え直すことです。

 

非日常のアウトドア研修と、日常のオフィス空間。

この2つを組み合わせることで、日々の仕事のなかでも対話が生まれる環境を考えることができます。

 

こうした環境へのアプローチは、心理的安全性だけでなく、「自分で考え、選択し、行動する」といった主体性の発揮を後押しするきっかけにもなります。

 

主体性については、「主体性は、育つもの。主体性と自主性の違いを知る」の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

オフィス環境から主体性を後押し

オフィス空間デザイン事例 | リコージャパン株式会社様 「オフィスは文化を育てる土壌へ」

ここまで紹介した「場からのアプローチ」を実践しているオフィス空間デザインの事例として、リコージャパン株式会社様の導入事例を紹介します。

同社では、社員が自ら考え、選択し、行動できる環境づくりを目指し、オフィス空間そのものを見直しました。

働く場所を自分で選べる環境や、自然とデジタルを融合した空間を取り入れることで、社員が自分の意思で働き方を選択できるオフィスを実現しています。

 

こうした環境は、部署や役職を超えたコミュニケーションのきっかけにもなります。

この事例から見えてくるのは、「主体性を高めよう」と呼びかけるだけでなく、主体的に行動しやすい「場」を用意することの重要性です。

 

BANIのように先が見えにくい時代だからこそ、社員一人ひとりが考え、選択し、発言できる環境を日常のなかにつくることが、変化に対応できる組織づくりにつながります。

 

詳細については、リコージャパン株式会社様の導入事例にて紹介していますので、ぜひご覧ください。

自社でできる、心理的安全性を高める第一歩

「場を変える」と聞くと、大がかりなオフィス改修をイメージするかもしれませんが、小さな変化から始めることもできます。

 

  • ・ 座席配置を見直す:役職や部署で固定された配置だけでなく、気軽に話せる場所をつくる

  • ・ 自然要素を取り入れる:観葉植物や自然素材、自然光などを取り入れ、リラックスできる環境をつくる

  • ・ オフサイトの機会をつくる:定例会議の一部をオフィスの外や屋外で行い、普段とは異なる対話の機会をつくる

  • ・ 焚火を囲む時間をつくる:アウトドア研修の要素を小さく取り入れ、普段とは異なる環境で対話してみる

 

大切なのは、「意識を変える」か「環境を変える」かの二択ではありません。マネジメントや研修による働きかけに、環境というもうひとつの視点を加える

この積み重ねが、心理的安全性を支え、変化に対応できる組織づくりにつながっていきます。 

まとめ:VUCAからBANIの時代に、心理的安全性を高める組織づくりへ

VUCAは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性という「変化する状況」を捉える概念です。
一方、BANIは、そうした変化のなかで起きる「脆さ・不安・非線形・不可解さ」に目を向ける視点です。

特に「Anxious(不安)」に向き合ううえで重要になるのが、心理的安全性です。

 

そして、心理的安全性を考えるときには、マネジメントや研修だけでなく、人と人が日々どのように関わるのかという「」にも目を向ける必要があります。

 

焚火を囲むアウトドア研修のような非日常体験と地続きで、対話が生まれやすくなるオフィス空間

人の意識や行動と、それを支える環境の両面から組織を考えることで、変化にしなやかに対応できる組織づくりにつながります。

 

不確実で先が見えない時代だからこそ、意識だけでなく、「場」からも変えていく

この積み重ねが、これからの組織に求められる柔軟性を支えていきます。 

よくある質問

よくある質問

Q. VUCAとBANIの違いは何ですか?

VUCAは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性という「変化する状況」の特徴を捉えた概念です。一方BANIは、変化の激しい世界で起きる「脆さ・不安・非線形・不可解さ」に目を向けた概念です。

Q. BANIを提唱したのは誰ですか?

米国のフューチャリスト、ジャメイス・カシオ(Jamais Cascio)氏です。2018年にBANIを考案し、2020年に自身の論考「Facing the Age of Chaos」で公に提示しました。

Q. 心理的安全性は環境改善だけで高まりますか?

環境改善だけで心理的安全性が実現するわけではありません。マネジメントやコミュニケーション、研修などとあわせて、会議室のレイアウトや座席配置、自然要素などの「場」を整えることで、対話やコミュニケーションを後押しすることができます。 

心理的安全性を育む環境づくりをご検討の方は、ぜひご相談ください

スノーピークビジネスソリューションズでは、心理的安全性やエンゲージメント向上について、組織の状況に合わせたご相談を承っています。
アウトドア研修やオフィス空間デザインなど、貴社の状態に合わせたご支援内容については、お気軽にお問い合わせください。

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参考文献

  • ※1 Jamais Cascio「Facing the Age of Chaos」(Medium, 2020)

  • ※2 Edmondson, A. C.「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」(Administrative Science Quarterly, 1999)

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