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【さぁ、そろそろ、焚火を囲んで話そう_Vol.69】
問いを立て、価値をつくる人を育てる
〜これからの社会人教育に必要な「課題発見力」と「協働する力」〜

【さぁ、そろそろ、焚火を囲んで話そう_Vol.69】
問いを立て、価値をつくる人を育てる
〜これからの社会人教育に必要な「課題発見力」と「協働する力」〜

スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。

このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。

読み手のみなさんにとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。

「雇われる人」だけでなく、「価値を生み出す人」を育てる

ヨーロッパのキャリア教育について調べていたときに、興味深い考え方に出会いました。ヨーロッパ全体で一つの共通した教育制度があるわけではありませんが、欧州委員会が示しているEntreCompという起業家精神に関する能力フレームワークでは、起業を「会社をつくること」だけに限定せず、アイデアを行動に変え、他者や社会に価値を生み出す力として捉えています(参考文献【1】)。

 

私が興味を持ったのは、キャリア教育が「どう雇われるか」だけにとどまっていない点でした。自分の強みを知り、社会や生活の中にある課題を見つけ、必要な資源を集め、他者を巻き込みながら形にしていく。

つまり、働くとは、仕事を与えられることだけではなく、仕事や価値をつくることでもあるという考え方です。

 

ヨーロッパ諸国や日米を含む38カ国の先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)は、若者のキャリア形成において、学校だけで完結するのではなく、企業や雇用者との接点を持つことの重要性を指摘しています(参考文献【2】)。

日本でも必要になる「課題を見つける教育」

日本の教育でも、探究学習やプロジェクト型学習など、少しずつ変化は始まっています。一方で、まだ多くの場面では、与えられた問題に対して正しい答えを出す力が中心になっていることも感じます。

 

もちろん、その力も大切だと思います。基礎学力や論理的に考える力がなければ、仕事を進めることはできません。ただ、現代の社会では、そもそも「何が本当の課題なのか」が分かりにくくなっています。少子高齢化、人材不足、地域活性、DX、組織変革、働きがいの向上。どれも、単純な正解がある問題ではありません。

 

だからこそ、これからの教育では、社会課題、生活上の課題、身の回りの違和感を自分で見つけ、それをどう解決するかを考える力を育てる必要があると思います。

 

PBL(Problem-Based Learning:問題解決型学習)は、柔軟な知識、問題解決力、自己主導的な学び、協働する力を育てる教育方法として整理されています(参考文献【3】)。ただ、これを教育現場だけで進めていくのは簡単ではないと思います。
 

例えば、民間企業の経営者、企業で働く人、地域で事業や活動をしている人たちが外部講師として関わり、実際の社会課題を題材にしたプロジェクト型の教育を増やしていくような取り組みが重要になってくると考えています。

顧客の言葉を、そのまま「仕様」にしない

顧客の言葉を、そのまま「仕様」にしない

この考え方は、社会人になってからの仕事もそうだと思います。例えば、お客様から「こういうシステムが欲しい」「この機能を追加してほしい」と相談をいただいたとします。その言葉をそのまま「仕様」として受け取り、正確に実装することにも、もちろん価値はあります。ただ、より高い価値を生み出そうとするなら、深掘りが必要です。

 

お客様は、本当は何に困っているのか。
その機能が必要だと感じている背景には、どんな業務上・組織上の課題があるのか。

 

掘り下げることで、単なるシステム対応ではなく、業務プロセスの見直し、運用設計、組織課題なども含めた、本質的な課題解決につながっていきます。

 

デザイン思考の研究でも、複雑な問題に対しては、最初から解決策に飛びつくのではなく、問題の捉え方そのものを見直す「リフレーミング」が重要だとされています(参考文献【4】)。ここから分かるのは、良い解決策は、良い問いから生まれるということです。
 

顧客から言われた内容を仕様として受け止めるだけではなく、その奥にある構造を読み解き、顧客と一緒に問いを立て直す。これが、これからの社会人に求められる重要な力だと思います。

課題の本質は、対話の中で見えてくる

課題を深く捉えるには、一人の視点だけでは限界があります。豊富な経験がある人も、自分の見方には必ず偏りがあります。営業の視点、現場の視点、経営の視点など、最初はバラバラに見える意見も、場に出してみると少しずつ課題の輪郭が見えてきます。

 

例えば「売上が落ちている」という現象があったとしても、営業力の問題なのか、商品設計の問題なのか、市場の変化なのか、価格の問題なのか、組織内の連携不足なのかは、簡単には分かりません。関係者が対話しながら、事実やそれぞれの解釈を持ち寄ることで、少しずつ課題の本質に近づいていけます。

 

組織行動研究では、チームの学習行動を支える要素として「心理的安全性」が重視されています。エイミー・エドモンドソンは、心理的安全性を、チーム内で対人関係上のリスクを取っても安全だと感じられる共有信念として整理しています(参考文献【5】)。

 

これは、単に仲が良いという話ではなく、分からないことを分からないと言える、違和感を口にできる、未完成のアイデアを出せる状態が、チームの学習と課題解決を支えるということだと思います。

自然の中で、問いを深める

自然の中で、問いを深める

そのような対話を促すためには、日常のオフィスから少し離れた環境をつくることだと考えています。特に、自然の中に身を置くことには大きな意味があります。

 

自然環境は、人の注意力や認知の回復に良い影響を与えるという研究があります。環境心理学者のスティーブン・カプランは、自然環境が疲れた注意を回復させる可能性を示す注意回復理論を提唱しています(参考文献【6】)。また、アチリーらの研究では、自然環境への没入が創造的な問題解決と関係することを示した研究もあります(参考文献【7】)。

 

もちろん、自然の中に身を置くだけで自動的に良いアイデアが出る、という単純な話ではありません。

大切なのは、自然が人の心身を少し緩め、普段の役職や会議室の空気から離れ、人と人が本音に近い言葉で話しやすい状態をつくることです。

 

スノーピークビジネスソリューションズが提供しているアウトドア研修やキャンピングオフィスは、まさにそのための場づくりです。焚火を囲み、タープを立て、自然の中で食事をし、普段とは違う環境で対話する。

そうした体験を通じて、参加者は単なる座学だけでは得られない「協働の感覚」や「関係性の変化」を体で感じることができます。

 

これからの社会に必要なのは、問いを立て、仲間とともに価値をつくる人だと思います。課題を発見し、対話によって深め、アイデアと設計によって解決策に変えていく。その力は、学校教育でも、社会人教育でも、これからますます重要になっていくはずです。

 

スノーピークビジネスソリューションズは、自然とテクノロジーを健全に融合させながら、人が人間らしく働くための環境づくりに取り組んでいます。アウトドア研修やキャンピングオフィスは、単なる非日常体験ではありません。複雑な課題に向き合い、他者と協働しながら価値を生み出す人を育てるための実践の場です。

 

私たちはこれからも、自然の力、対話の力、テクノロジーの力を組み合わせながら、問いを立て、価値をつくる人と組織を増やしていきたいと考えています。

参考文献・参考情報

【1】EntreComp: The Entrepreneurship Competence Framework. European Commission, Joint Research Centre. (起業を会社設立に限定せず、社会や他者に価値を生み出すための能力として捉えるフレームワーク)
【2】OECD (2025), The State of Global Teenage Career Preparation, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/d5f8e3f2-en. (若者のキャリア形成における企業・職業人との接点の重要性を示した報告書)
【3】Hmelo-Silver, C. E.(2004)Problem-Based Learning (PBLが問題解決力や主体的学習を育むと整理した研究)
【4】Dorst, K.(2011)The core of ‘design thinking’ and its application. (デザイン思考におけるリフレーミングの重要性を論じた研究)
【5】Edmondson, A.(1999)Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. (心理的安全性がチーム学習を支えることを示した研究)
【6】Kaplan, S.(1995)The Restorative Benefits of Nature (心理的安全性がチーム学習を支えることを示した研究)
【7】Atchley, R. A., Strayer, D. L., & Atchley, P.(2012)Creativity in the Wild (自然環境への没入と創造性の関係を検証した研究)

坂田 真也(さかた・しんや)
Profile

坂田 真也(さかた・しんや)

代表取締役社長

2009年に入社し、システム営業部に配属され1,000社以上の製造現場を回り、システム提案及び導入支援を行う。​
2015年よりクラウドソリューション事業の責任者となり、コンサルティング業務を確立させ、顧客の様々な業務効率化や働き方改革を支援。
その後、ビジネスにアウトドアを取り入れたキャンピングオフィス事業の責任者や、スノーピークグループのDX支援を推進する責任者を歴任し、2024年に代表取締役社長に就任。

坂田 真也(さかた・しんや)
Profile 坂田 真也(さかた・しんや)

代表取締役社長

2009年に入社し、システム営業部に配属され1,000社以上の製造現場を回り、システム提案及び導入支援を行う。​
2015年よりクラウドソリューション事業の責任者となり、コンサルティング業務を確立させ、顧客の様々な業務効率化や働き方改革を支援。
その後、ビジネスにアウトドアを取り入れたキャンピングオフィス事業の責任者や、スノーピークグループのDX支援を推進する責任者を歴任し、2024年に代表取締役社長に就任。

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