職場環境改善の一環として、観葉植物を置いたり、自然光を取り入れたりする企業は少なくありません。
一方で、「導入したものの効果が見えにくい」「サステナビリティ施策とどうつなげればよいか分からない」と感じている総務・人事・経営企画のご担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
国は2030年までに、生物多様性の損失を止め、回復へと向かわせる「ネイチャーポジティブ」を目指しています。こうした動きを背景に、職場環境改善でも、自然を感じるオフィスをつくるだけでなく、企業と自然の関係を見直す視点がより求められています。
この記事では、職場環境改善の基本から、ネイチャーポジティブの動向、自然を感じるオフィスデザインの効果、導入方法、事例まで解説します。
自然を感じるオフィスの、その先へ。ネイチャーポジティブ時代の職場環境改善
職場環境改善とは?オフィスデザインから見直す3つの視点
職場環境改善とは、従業員が安全で健康に、意欲を持って働けるよう、職場の環境や働き方などを見直す取組です。
労働安全衛生法第3条では、事業者の責務として、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康を確保することが定められています(※1)。
改善の対象は幅広く、次の3つの視点で整理できます。
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・ 物理的環境: 温度、照明、騒音、レイアウト、植栽など
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・ 人間関係: 上司や同僚への相談のしやすさ、日常的な会話や交流
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・ 働き方: 業務量、裁量、勤務制度など
オフィスデザインは、物理的環境と人間関係の両方に働きかけられる点が特長です。例えば、人が自然と集まれる場所を設けることで、会話や交流が生まれやすくなります。
近年は、こうした空間づくりに自然の要素を取り入れる動きも見られます。その背景にあるネイチャーポジティブについて見ていきましょう。
なぜ今、ネイチャーポジティブなのか
ネイチャーポジティブとは
ネイチャーポジティブ(自然再興)とは、生物多様性の損失を止め、反転させ、自然を回復の軌道に乗せることです。日本では、2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」において、2030年に向けた目標として位置づけられています(※2)。
国と企業の動き
ネイチャーポジティブの実現に向け、国は生物多様性の保全や自然資本を生かした経済活動を推進しています。企業にとっても、自社の事業活動が自然に与える影響や自然への依存関係を把握し、保全に向けた取組を検討することが重要です(※2)。
企業の取組に関連する制度の一つが「自然共生サイト」です。民間の取組などによって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する仕組みで、2026年6月30日時点では合計610か所が認定されています(※2)。
オフィスとの接点
押さえておきたいのは、オフィスに緑を取り入れることと、企業が自然との関わりを見直すことは、同じではないという点です。
自然共生サイトの対象は、生物多様性の保全が図られている区域です。オフィスに植栽を置くだけで、ネイチャーポジティブに貢献したことになるわけではありません。
一方、オフィスは従業員が日常的に過ごす場所です。自然を身近に感じる空間をつくることは、企業と自然の関係を考えるきっかけにもなります。職場環境改善では、働きやすさに加え、自然との関わりにも目を向けてみましょう。
自然を感じるオフィスの効果
自然の要素とストレス、ウェルビーイング、創造性などとの関連は、海外の調査や研究でも報告されています。
床材メーカーのInterfaceが16か国のオフィスワーカー約7,600人を対象に実施した調査「Human Spaces」では、自然の要素がある環境で働く人は、そうでない環境で働く人と比べ、ウェルビーイングが15%、創造性が15%、生産性が6%高かったと報告されています(※3)。
一方で、2025年に発表された研究では、緑や木材の量を変えた11種類の仮想環境を用いて、心身への影響が調べられました。その結果、自然の量とウェルビーイングの関係は単純な比例ではなく、自然要素が多すぎる環境ではストレスにつながる可能性も示されました(※4)。
こうした知見を踏まえると、オフィスに自然を取り入れる際は、緑を増やすこと自体を目的にするのではなく、空間の用途や利用者のニーズに合わせて、植物の量や配置を考えることが大切です。自然を感じられる心地よさと、仕事に集中しやすい環境とのバランスを意識しながら、自社に合った空間づくりを進めましょう。
「自然を感じる」その先へ|オフィスデザインで考える3つの視点
自然を感じるオフィスを職場環境改善につなげるには、「五感」「人が集まる場」「オフィスの外の自然」という3つの視点で考えると整理しやすくなります。
視点① 五感で自然を取り入れる
スノーピークビジネスソリューションズが提案する「キャンピングオフィス」では、植栽に加え、自然音やアロマなど、五感に働きかける要素を組み合わせた空間づくりを行います。
自然の感じ方や好みには個人差があります。要素を一律に増やすのではなく、空間の用途や利用者に合わせて取り入れることがポイントです。
視点② 人が集まり、関係が育つ場をつくる
自然を感じる空間は、会話や交流が生まれる場としても活用できます。キャンピングオフィスでは、目的に応じて次のようなスペースを設けます。
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・ ミーティングサイト: グリーンを取り入れ、リラックスして対話できる場
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・ 焚火サイト: 雑談や相談、1on1にも活用できる場
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・ ブレイクサイト: 一息つきながら、気軽な会話を楽しめる場
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・ コラボレーションサイト: 部門を超えた交流や共同作業を促す場
テーブルや椅子を動かせるようにすると、利用目的に応じてレイアウトを柔軟に変えられます。対面で話しやすい配置も、部門や年次を超えた交流のきっかけになります。
場づくりと日頃の関係性については、「1on1で本音を引き出す『場』と日常のつくり方」でも解説しています。
視点③ オフィスの外の自然とつながる
オフィスの中だけでなく、外の自然に触れる機会をつくることも一つの方法です。
自然豊かな施設でのオフサイトミーティングやアウトドア研修は、普段とは異なる環境で対話し、従業員同士の関係を深めたり、自社と自然との関わりを考えたりする機会になります。
なお、生物多様性の保全に取り組む際は、敷地の緑地管理など、企業活動に応じた具体的な施策も検討する必要があります。オフィスデザインは、自然を身近に感じ、自然との関係を考える入り口として活用できます。
取り入れ方|小さく始めて、広げる3つのステップ
自然を感じるオフィスづくりは、大がかりな改修から始める必要はありません。次の3つのステップで段階的に進められます。
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Step1: 小さく始める
窓際や休憩スペースに植栽を置く、自然光を取り入れやすいレイアウトにするなど、既存の空間でできることから試します。
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Step2: 人が集まる場をつくる
ラウンジの一角などに交流できるスペースを設け、利用状況を見ながら調整します。
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Step3: 空間全体を設計する
動線やゾーニングも含めて部門やフロア全体を見直し、必要に応じて専門の施工パートナーと連携します。
失敗を防ぐための3つのポイント
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・ 目的を決める: リフレッシュ、会話の活性化、創造性の発揮など、目指す状態に合わせて要素を選びます。
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・ 従業員の声を聞く: 導入前にアンケートを行い、導入後も反応や要望を確認します。
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・ 個人差に配慮する: 一人で集中・休憩できる場所と、交流できる場所の両方を用意します。
効果の確かめ方
導入後は、次のような指標を組み合わせて変化を確認しましょう。
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・ ストレスチェックの集団分析:部署ごとの傾向を把握する手がかりにします。
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・ 利用状況:スペースの利用頻度や時間帯、用途を確認します
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・ アンケート:会話の変化や働きやすさについて、従業員の感じ方を把握します。
一つの数値だけで効果を判断せず、導入前後の変化と従業員の声を組み合わせて評価することが大切です。
五感で感じる自然のちから、垣根を越えてつながるオフィス
テスホールディングス株式会社様 導入事例
自然を感じる空間と、部門を超えたコミュニケーションを組み合わせた事例として、テスホールディングス株式会社様のオフィスをご紹介します。
同社は、省エネルギーや再生可能エネルギーなど、エネルギーに関する事業を展開するTESSグループの企業です。オフィスリニューアル前は、長い廊下を挟んで事務所が南北に分かれており、フロアの違いが心理的な距離につながるなど、気軽な相談や部門間の連携に課題がありました。
そこで、社員同士のコミュニケーション活性化を目指し、フリーアドレスとキャンピングオフィスを取り入れたオフィスづくりに着手しました。
オフィスの中心には、アウトドア空間「BASE CAMP」を配置。周囲を8の字型の動線でつなぐことで、人が自然に行き交い、交流が生まれやすいレイアウトを実現しています。
空間づくりでは、次のような工夫を取り入れています。
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五感で自然を感じる空間:
テントやアウトドア家具に加え、鳥の声や川のせせらぎ、森をイメージしたアロマなどを取り入れ、オフィスにいながら自然を感じられる環境を整備。
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目的に応じて働く場所を選べる環境:
集中して仕事に取り組む個別ブースと、リラックスしたり気軽に話したりできるキャンプエリアを使い分けられるように設計。
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交流や共同作業を促すレイアウト:
家具を柔軟に動かせるようにし、ランチや打ち合わせ、グループワークなど、用途に合わせて空間を活用できるように工夫。
導入後は、他部署との垣根が低くなり、当初の目的だったコミュニケーションの活性化につながったといいます。キャンプエリアはランチの場として利用されるだけでなく、日中の打ち合わせにも活用されるようになりました。
また、新入社員研修にもBASE CAMPを活用。周囲で働く社員が研修の様子を見に来るなど、従来の会議室とは異なる交流も生まれています。机や椅子の配置を簡単に変えられることも、グループワークを活発にする要因の一つです。
この事例は、自然を感じる空間を設けるだけでなく、働く場所の選択肢や人が行き交う動線を工夫することで、日常のコミュニケーションや部門を超えたつながりを育めることを示しています。
詳しくは、導入事例「五感で感じる自然のちから、垣根を越えてつながるオフィス。」をご覧ください。
よくある質問
Q. ネイチャーポジティブとオフィスづくりは、どう関係しますか?
オフィスに緑を取り入れるだけで、ネイチャーポジティブが実現するわけではありません。緑地管理などの取組とあわせ、従業員が自然との関わりを考えるきっかけとして活用できます。
Q. 賃貸や小規模オフィスでも、自然を感じる空間はつくれますか?
植物を置いたり、家具の配置を変えたりするなど、小さな工夫から始められます。工事を伴う場合は、事前にビル管理会社などへ確認しましょう。
Q. 効果はどのように測ればよいですか?
スペースの利用状況や従業員アンケート、ストレスチェックの集団分析などを組み合わせ、導入前後の変化を確認します。数値だけでなく、従業員の声も参考にしましょう。
まとめ|職場環境改善は、自然との関わりを見直す視点へ
職場環境改善は、物理的環境、人間関係、働き方の3つの視点で進めるものです。オフィスデザインは、空間と人間関係の両方に働きかけられます。
ネイチャーポジティブが目指されるなか、自然を感じるオフィスづくりにも、働きやすさだけでなく、自然との関係を考える視点が加わっています。
ただし、自然を取り入れれば必ず効果が得られるわけではありません。「五感」「人が集まる場」「オフィスの外の自然」という3つの視点から、自社の目的や職場のニーズに合わせて取り組むことが大切です。
まずは、自社のオフィスに自然を感じられる場所や、気軽に集まれる場所があるか、見直してみてはいかがでしょうか。
自然を感じるオフィスづくりをご検討の方へ
スノーピークビジネスソリューションズでは、職場環境改善やオフィスデザインについて、組織の状況や目的に合わせたご相談を承っています。
キャンピングオフィスでは、空間を整えるだけでなく、社員同士の関係性が育まれるプロセスも大切にしています。課題のヒアリングから導入後のフォローアップまで、専任の担当者が伴走します。お気軽にお問い合わせください。
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参考文献
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※1 e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
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※2 環境省「生物多様性国家戦略2023-2030」および自然共生サイト関連資料https://www.env.go.jp/nature/biodiversity/initiatives6.html
https://www.env.go.jp/press/press_05186.html
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※3 Interface, “Human Spaces: The Global Impact of Biophilic Design in the Workplace,”2015.
https://www.interface.com/content/dam/interfaceinc/interface/global-campaigns/human-spaces/report/global-human-spaces-report/Human%20Spaces%20report%202015%20EN.pdf
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※4 Bianchi, E. & Billington, S. L., “How much nature do we need? An exploration of dose-response relationships between indoor nature dose and building occupant well-being,” Sustainable Cities and Society, 134, 2025.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2210670725007474

