スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
「変化に対応できる組織になっていきたい」──これは、多くの企業が掲げる理想の姿ではないでしょうか。
もちろん、変化が起きた際に柔軟に対応する力は必要です。私たちが提供するアウトドア研修でも、その力は確実に高まっていきます。
しかし、変化に反応して動くだけでは、未来を創ることはできません。
これからの時代に本当に求められるのは、“変化対応力”ではなく、“変化創造力”。
つまり、変化そのものをデザインする力だと思います。
今、多くの企業が抱えているのは「変化を避ける文化」です。
過去の成功体験や仕組みを手放せず、「今のままでうまくいっている」と現状を正当化してしまう。
変化することを“リスク”と捉え、変わらないことを“安定”と錯覚してしまう。
前例のないチャレンジは、承認の判断材料がないため却下されがちです。
いわゆる「大企業病」と呼ばれる現象も、ここに根を持っています。
しかし、社会も市場も、人の価値観も確実に変化しています。
変化を拒むことは、“衰退を受け入れる”ことと同義です。
周囲が変化している中で自社だけが変わらなければ、それは相対的な後退を意味します。
大切なのは、変化を恐れず、変化を素材として新しい価値を生み出す感性を育てることです。
私たちが行っているアウトドア研修は、まさにその感性を育てる場です。
自然の中では、予定通りに進むことのほうがむしろ珍しい。
晴れていた空が急に雨に変わる。風が強まり、タープの下に吹き込んでくる。
そうした環境の変化に直面したとき、チームがどう動くかにその組織の本質が現れます。
たとえば、雨が降ってきたとき。
ただ「対応」するのではなく、「この状況を受け入れたうえで、どんな環境を創ると良いだろう?」と話し合いながら、タープを張り直していく。
そのプロセスの中から、「雨音が意外と集中力を高めてくれる」「せっかくだから雨音をBGMにして焚火の時間をゆっくり味わおう」といった発想が生まれます。
変化を受け入れ、意味づけし、行動で再設計する──この3つのサイクルこそが“変化をデザインする”原則です。
1. 受け入れる:予期せぬ変化を否定せず、「これも現実だ」とまず受け止める。
2. 意味づける:その出来事にチームで意味を与え、「この状況をどう活かせるか?」と解釈を変える。
3. 行動で再設計する:小さく動きながら、新しい環境を自分たちの手でつくり出す。
この3つのプロセスが回り始めると、変化は脅威ではなく、創造のきっかけに変わります。
実際にお客様からも「天候が揺れた研修のほうが効果が高い」と言われることがあります。
それはまさに、予測できない自然の揺らぎが創造性を引き出す瞬間を体感できるからです。
組織が変化をデザインするためには、「ダブルループ学習」の考え方が参考になります(参考文献【1】)。
ハーバード大学のクリス・アージリスとドナルド・ショーンが提唱したこの理論は、単に行動を修正する“シングルループ”ではなく、行動の前提となる考え方や価値観そのものを問い直すというものです。
たとえば、「風向きが変わったからタープを張り直す」という対応はシングルループ。
しかし、「なぜこの向きにタープを立てていたのか」「そもそもチームで何を体験したかったのか」と考えるのがダブルループです。
この「問い直す力」こそが、変化をデザインする出発点です。
経営においても同じです。
環境変化に合わせて制度を変えるだけではなく、「なぜこの制度が必要なのか」「組織をどんな姿にしたいのか」「私たちは何のために働いているのか」という“前提”を見直すことで、初めて本質的な変革が動き出します(参考文献【2】【3】)。
多くの企業は、変化が起きてから慌てて動き出します。
しかし、それでは常に後手に回ってしまいます。
これからのリーダーに求められるのは、変化の兆しに“意味づけ”を行い、先回りして設計する力です。
社会で新しい価値観の変化が生まれたとき、それを単なるトレンドとして受け流すのではなく、「これは何を示しているのか」「この変化から何を学べるか」と問い直し、行動に変えていく。
この“先回りの感性”こそが、未来をデザインする力につながります。
変化をデザインするとは、新しい変化をつくることではありません。
起きた変化をどう受け止め、そこから何を生み出すか──。
その積み重ねの先にこそ、自ら変化を起こす力が育っていくのだと思います。
変化をデザインできる組織とは、完璧な計画を持つ組織ではありません。
予期せぬ出来事が起きたときに「さぁ、面白くなってきたぞ」「私たちならやり抜ける」と感じられる組織です。
「どうすればこの状況を活かせるか」「この揺らぎから何を学べるか」という対話が自然に生まれるチームには、変化を恐れず、むしろ楽しむ文化があります(参考文献【2】【3】)。
変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をデザインすることで未来を創造する。
この力こそが、これからの時代を生き抜く“人間らしい力”だと思います。
そして、その感性を育てる場として、自然の中ほど優れた環境はありません。
【1】Argyris, C., & Schön, D. A. (1978). Organizational Learning: A Theory of Action Perspective. Addison-Wesley.
【2】Weick, K. E. (1995). Sensemaking in Organizations. Sage Publications.
【3】Senge, P. M. (1990). The Fifth Discipline: The Art & Practice of The Learning Organization. Doubleday.