スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
心理学者クルト・レヴィンは、組織変革のプロセスを「Unfreeze(解凍)─Change(変化)─Refreeze(再凍結)」の3段階で説明しています。(参考文献【1】)
この理論が示しているのは、「変化」はいきなり起こせるものではなく、その前に“変化を受け入れる準備”が必要だということです。
一般的に変わろうとするとき、人はつい「何を変えるか」「どう変えるか」という方法論から考え始めてしまいます。
しかし、どれだけ立派な計画を立てても、組織や個人の心が“今の状態”に固まったままでは、変化は起こりません。
Unfreezeとは、凝り固まった意識や慣習を一度ゆるめ、変化のための余白をつくることです。
つまり、変化の第一歩は「止まること」、そして「解かすこと」から始まるのだと思います。
激動の世の中で、多くの企業が「変革」を掲げています。
しかし現場では日々の業務に追われ、「立ち止まる時間」を取ること自体が難しいのが現実です。
忙しさは、“現状維持”という見えない慣性力を生み、変化の必要性を理解していても、行動が伴わなくなっていきます。
だからこそ、組織が変わるためにはまず「止まる勇気」を持つことが大切だと考えています。
走り続けることよりも、一度立ち止まる機会をつくり、今の自分たちの在り方を見つめ直す時間を意図的に設ける。
その時間こそが、組織にとってのUnfreezeの始まりになります。
この「解凍」のプロセスを実現するのが、私たちが提案しているキャンピングオフィスという環境です。
いつもの会議室やレイアウトのままでは、意識はどうしても凝り固まってしまいます。
同じ席順、同じホワイトボード、同じ議題の進め方──。
それでは、思考もまた同じフレームの中で回り続けてしまいます。
一方で、キャンピングオフィスでは、社員自身がキャンプギアを使ってその日の目的に合わせて場をつくります。
イスを動かし、テーブルを組み合わせ、空間そのものを自分たちでデザインしていく。
そうすることで、「変えていいんだ」「自由に発想していいんだ」という心理的なモードに自然と切り替わっていきます。
これはまさに、Unfreezeを促す物理的な仕掛けだと思います。
さらに、屋外や自然の中で行うキャンピングオフィスのアウトドア研修では、風や光、焚火のゆらぎなど五感が刺激され、雄大な自然を感じることで、現状のフレームにとらわれることなく、より大きな発想ができる意識へと変化していきます。
人は環境に影響される生き物です。
環境が変わることで、意識が変わり、行動が変わる。
私たちはその「場」をデザインすることを仕事にしています。
変化を押し付けるのではなく、変化が自然に起こるように“環境から整える”──これがスノーピークビジネスソリューションズの考える変革支援の本質です。
自然の中で過ごす時間は、変化を受け入れる力を育ててくれます。
天候は思い通りにならず、風の強さもコントロールできません。
だからこそ、人はその環境に合わせて柔軟に動き、協力し合うようになります。
変化を恐れるのではなく、受け入れ、楽しむ。
この感覚が、組織にとっても大切だと思います。
変化を“コントロール”しようとするよりも、まず“受け入れる”こと。
その柔軟な心の状態が一人ひとりに整ったとき、組織の中に自然と新しいエネルギーが生まれていきます。
Unfreezeとは、そのエネルギーが流れ始める前の「心の解凍期」なのだと思います。
Unfreezeの時間は、表面的には“何もしていない”ように見えるかもしれません。
常にスピード感をもって働き続けていた人たちにとっては、じれったく感じる時間かもしれません。
しかし、実際には変化の種が静かに芽を出し始めている時間です。
立ち止まり、問いを立てることで、これまで見えていなかった方向性が浮かび上がってきます。
焚火を囲んで語り合う時間、自然の音に耳を澄ます時間。
そうした余白の中だからこそ、人は自分自身や仲間と深く向き合うことができます。
そして、その中から「次に進みたい」という自然な内発的な動機が生まれてきます。
組織変革の本質は、制度や構造を変えることではなく、人の意識が動き出すことにあります。Unfreezeとは、その意識を動かすための“環境を整える”段階です。
キャンピングオフィスのように、意識が柔らかくなり、思考が広がる場が整ったとき、Change(変化)とRefreeze(定着)は自然な流れとして起こっていきます。
変化は努力や根性で生み出すものではなく、場の力と人の自然な反応によって生まれる。
その起点にあるのが、Unfreeze──“解かす”というプロセスなのだと思います。
【1】Burnes, B. (2019). The Origins of Lewin’s Three-Step Model of Change. University of Stirling