スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
近年、多くの企業で「働きやすさ」を整える取り組みが進んでいると思います。
リモートワーク、フレックス制度、DX推進、業務効率化。
以前と比べると、働く環境は大きく進化してきています。
一方で、
「同僚とコミュニケーションが減った」
「気持ちが満たされない」
「働く意味を見失いやすい」
といった声は、私たちのチームビルディング研修の現場でも、以前より多く聞かれるようになっています。
便利になっているはずなのに、人の幸福感は必ずしも比例して高まっているわけではない――そんな感覚があります。
幸福学の研究では、人の幸福には「地位や報酬」だけでなく、
・良好な人間関係
・自己決定感
・自然とのつながり
・感謝や利他性
などが深く関係すると言われています。(参考文献【1】)
特に興味深いのは、「自然との接触」が幸福感に大きく影響するという研究です。
イギリスの研究では、週に120分以上自然環境で過ごした人は、幸福感や健康状態が高い傾向にあるという結果も報告されています。(参考文献【2】)
また、森林や公園など自然環境に触れることで、ストレスホルモンであるコルチゾールが低下し、副交感神経が優位になりやすいことも知られています。(参考文献【3】)
つまり自然は、単なる“気分転換”ではなく、人間の心身そのものを整える力を持っているのだと思います。
幸福というと、「楽しい」「快適」「ポジティブ」といった個人的な感情をイメージしやすいかもしれません。
ですが近年、企業で働く人たちにとっても、“ウェルビーイング”という考え方が重視されるようになっています。
ウェルビーイングとは、一時的な楽しさだけではなく、
・自分らしく生きられている感覚
・誰かとつながっている感覚
・意味や目的を感じられている状態
なども含めた、より広い概念です。
働くうえでも重要な観点であり、冒頭で触れたような課題とも深く関係しています。
ここで注目されているのが、「Awe(オウ)体験」と呼ばれるものです。
Aweとは、壮大な自然や圧倒的な景色に触れた時に感じる、“畏敬”や“心が動かされる感覚”を指します。(参考文献【4】)
例えば、
焚火を静かに眺めている時間。
満天の星空を見上げる瞬間。
広い森の静けさの中で深呼吸する感覚。
そうした体験をした時、人は「自分中心」の視点から離れ、物事をより大きな視点で捉えやすくなると言われています。
心理学者ダッチャー・ケルトナー氏らの研究では、Awe体験は利他性や他者とのつながり感を高める可能性が示されています。(参考文献【5】)
私自身、アウトドア研修の現場で、自然の中に入った瞬間に、人の表情や会話が変わっていく場面を何度も見てきました。
オフィスや会議室では言えなかった“ちょっとした一言”が出てくる。
役職を越えて自然と助け合いが生まれる。
普段は忙しさの中で見えていなかった相手の良さに気づく。
自然には、人の“感覚”を開く力があるのだと思います。
企業では、「心理的安全性」「エンゲージメント」「創造性」といったキーワードの重要性が、これまで以上に語られるようになっていると思います。
ただ、それらは制度だけで高まるものではないと思っています。
どれだけ良い制度を導入しても、人が疲弊していたり、余白を失っていたりすると、本音で対話したり、新しい挑戦をすることは難しくなります。
組織開発の世界では、MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム氏が提唱した「成功循環モデル」が有名です。(参考文献【6】)
このモデルでは、成果を生み出す起点は“関係の質”にあるとされています。
関係性が良くなることで、思考が前向きになり、行動が変わり、結果につながっていく。
逆に関係性が悪化すると、どれだけ正しい施策を導入しても、機能しづらくなる。
これは、企業や組織で働く皆さんにも、経験のある感覚ではないでしょうか。
私たちが提供している「アウトドア研修」では、単なる知識習得ではなく、“協働体験”を重視しています。
自然の中でタープを設営したり、焚火を囲みながら対話したりする中で、人は相手の役職ではなく、“一人の人間として”見るようになります。
五感が刺激される環境だからこそ、人と人との距離感が変わるのだと思います。
私たちは、日常の働く空間にも植栽を取り入れ、自然性を感じられる環境づくりを大切にしています。
最近では、オフィス回帰の流れもあり、「人が集まりたくなる場」を再設計する企業も増えてきました。
ただ、単純に綺麗なオフィスをつくるだけでは、人の関係性は変わりません。
私たちがオフィスにキャンプギアを設置する「キャンピングオフィス」は、自然素材やアウトドアの空気感を取り入れることで、働く人たちがコミュニケーションを取りやすい雰囲気に変え、“つながり方が変わる”働き方を目指しています。
最近では、オフィスに植栽を取り入れ、視界の中の緑の割合を示す「緑視率」を高める取り組みも注目されています。
自然を感じられる空間は、心理的ストレスの軽減や集中力向上につながる可能性があると言われています。(参考文献【7】)
現代のオフィスは、常に通知や情報にさらされ、“集中し続ける疲労”が蓄積しやすい環境です。
だからこそ、
少し視線を遠くに向けられる空間。
雑談が自然に生まれる場。
深呼吸できるような空気感。
そうしたものが、結果として創造性やコミュニケーションに影響していくのではないかと思います。
AIが進化し、社会が便利になるほど、「人間らしさ」の価値はむしろ高まっていくと思います。
共感する力。
人を信頼する力。
自然の中で感性を取り戻す力。
誰かと対話し、つながる時間。
こうしたものは、効率だけでは代替できません。
私たちスノーピークビジネスソリューションズは、自然の力とテクノロジーの可能性を健全に融合しながら、“人間らしく働く人たち”を増やしたいと考えています。
働くことは、本来、苦しむための労働ではなく、誰かとつながり、自分の力を活かし、社会に貢献する営みなのだと思います。
だからこそ、時には自然の中に身を置き、立ち止まり、自分自身や仲間との関係を見つめ直す時間をつくり、“中和すること”が必要なのだと思います。
その積み重ねが、働く人の幸福感を高め、結果として強い組織をつくっていく。
私たちは、そんな未来を創っていきたいと思います。
【1】 Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist.
【2】 White, M. P. et al. (2019). Spending at least 120 minutes a week in nature is associated with good health and wellbeing. Scientific Reports.
【3】Park, B. J. et al. (2010). The physiological effects of Shinrin-yoku (taking in the forest atmosphere or forest bathing). Environmental Health and Preventive Medicine.
【4】 Keltner, D., & Haidt, J. (2003). Approaching awe, a moral, spiritual, and aesthetic emotion. Cognition and Emotion.
【5】Piff, P. K. et al. (2015). Awe, the small self, and prosocial behavior. Journal of Personality and Social Psychology.
【6】 Daniel Kim, D. H. (2001). Organizing for Learning: Strategies for Knowledge Creation and Enduring Change.
【7】Kaplan, R., & Kaplan, S. (1989). The Experience of Nature: A Psychological Perspective. Cambridge University Press.