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【さぁ、そろそろ、焚火を囲んで話そう_Vol.61】
なぜ自然の中では、人と組織の関係性が変わるのか

【さぁ、そろそろ、焚火を囲んで話そう_Vol.61】
なぜ自然の中では、人と組織の関係性が変わるのか

スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。

このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。

読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。

「発言してください」では変わらない組織がある

最近、多くの企業で「心理的安全性」が重要なテーマになっていると思います。(参考文献【1】)
 

会議で発言が少ない。

若手から提案が出ない。

部門間の壁が高い。

 

そんな課題感から、対話研修や1on1、ファシリテーション研修などに取り組む企業も増えています。

一方で、実際には「研修の場では話せたのに、職場に戻ると元に戻ってしまう」という声も少なくありません。

 

私は、この背景には“個人の問題”ではなく、“場の構造”の問題があると思っています。

 

例えば、オフィスや会議室という空間には、役職・評価・上下関係・専門性の差など、さまざまな「組織の中の役割」が常に存在しています。
 

人は無意識のうちに、「変なことを言わない方がいい」「否定されたくない」「評価を下げたくない」と感じやすくなります。

 

つまり、心理的安全性が低い状態とは、「話し方」や「性格」の問題というより、“評価リスクが存在している環境”に長時間置かれていることが、大きな要因なのではないかと思います。

だからこそ、「もっと発言しよう」と呼びかけるだけでは、本質的な変化は起きにくいのだと思います。

自然環境が、人の状態を変える理由

自然環境が、人の状態を変える理由

では、なぜ自然の中では、人が少し素直になれたり、本音を話しやすくなったりするのか。

これは単なる感覚論ではなく、環境心理学や神経科学、社会心理学などの領域でも研究が進んでいます。

 

代表的なものの一つに、Kaplan夫妻による「注意回復理論(Attention Restoration Theory)」があります(参考文献【2】)。
 

都市やオフィス環境では、人は常に「意図的注意」を使い続けています。
メール、会議、チャット、評価、マルチタスク……。

脳は絶えず緊張状態に置かれています。

 

一方、自然環境には、人の注意を無理なく引きつける「fascination(穏やかな没入)」があるとされています。
その結果、脳の認知疲労が回復し、防衛的な反応が和らぐと言われています。(参考文献【3】)

 

私はこれが、アウトドア研修の本質的な効果のひとつだと思っています。

 

自然は「リラックスの場」というより、「認知負荷を下げ、本来の人間性を取り戻しやすくする場」なのだと思います。

実際、アウトドア研修では、タープ設営や焚火、食事の準備など、“教科書のない共同作業”が発生します。

 

そこでは役職よりも、「誰が気づくか」「誰が助けるか」「誰が場を見て動くか」が重要になります。
会議室では見えにくかった人の一面が自然と表れ、「あの人って、実はこんな人だったんだ」という理解が生まれていきます。

 

これは単なるレクリエーションではなく、関係性の再構築だと思っています。

組織開発は、“知識”だけでは進まない

組織開発の世界では、「人は体験を通じて変化する」という考え方が重視されています。

特に、David Kolbの経験学習理論(参考文献【4】)では、

1.具体的経験

2.振り返り

3.概念化

4.実践

という循環によって、人の学びと行動変容が起きるとされています。

 

ここで注目したいのは、「まず体験がある」という点です。

 

多くの企業研修は、“知識を入れる”ことに比重が置かれがちです。

しかし実際には、人間関係や組織文化の変化は、説明だけでは起きません。

 

例えば、

・助け合えた

・本音を話せた

・一緒に困難を乗り越えた

・自分の弱さを出せた

こうした身体感覚を伴う経験があるからこそ、行動が変わっていくのだと思います。

 

スノーピークビジネスソリューションズが提供する「アウトドア研修」では、自然環境そのものを活用しながら、こうした「関係性が変化する体験」を設計しています。

 

また、研修だけで終わらせず、日常空間へ接続していくことも重要だと思っています。

“キャンピングオフィス”が目指していること

“キャンピングオフィス”が目指していること

私たちが取り組むオフィス空間デザインの「キャンピングオフィス」も、単なるデザイン提案ではありません。

 

オフィス空間は、組織文化そのものを映し出します。

固定席中心で、会議室に閉じ、雑談が生まれない環境では、人間関係も「業務上必要な関係」に限定されやすくなります。

 

一方で、自然素材やアウトドア要素を取り入れたキャンピングオフィスの空間では、偶発的な会話や、少し立ち止まる余白が生まれます。

 

環境心理学では、人の行動は「個人の意思」だけでなく、「環境との相互作用」によって形成されるという考え方があります(参考文献【5】)。

つまり、「もっとコミュニケーションを取ろう」と言うだけではなく、“コミュニケーションが自然に起きる構造”を設計する必要があるのだと思います。

 

アウトドア研修で生まれた関係性を、オフィス空間でも持続させる。

 

これは、私たちが目指している大切なテーマのひとつです。

AI時代だからこそ、「人間らしさ」が価値になる

これからAIがさらに進化し、多くの知識や情報が誰でも扱える時代になっていくと思います。

 

だからこそ、組織において重要になるのは、

・信頼関係

・共感

・主体性

・対話

・意味づけ

・人間的なつながり

といった、“人と人の間にしか生まれない価値”なのだと思います。

 

私は、自然には、人間を「役割」から少し解放し、「本来の状態」に戻してくれる力があると思っています。

そしてその状態で生まれる対話や協働体験が、組織の土台を少しずつ変えていくのだと思います。

 

効率化だけでは、強い組織にはならない。

人が“役割”ではなく、一人の人間としてつながれる環境をどうつくるか。

 

その問いに対して、私たちはこれからも、自然とテクノロジーの両方を活かしながら向き合っていきたいと思っています。

参考文献・引用情報

【1】 Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
(心理的安全性研究の代表的論文)

【2】 Kaplan, R. & Kaplan, S. (1989). The Experience of Nature: A Psychological Perspective. Cambridge University Press.
(注意回復理論 / Attention Restoration Theory)

【3】 Ulrich, R. S. (1984). View through a window may influence recovery from surgery. Science, 224(4647), 420–421.
(自然環境が人間のストレス回復に与える影響研究)

【4】 Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice Hall.
(経験学習理論)

【5】 Lewin, K. (1951). Field Theory in Social Science. Harper & Row.
(人の行動は個人と環境の相互作用で決まるという場の理論)

坂田 真也(さかた・しんや)
Profile

坂田 真也(さかた・しんや)

代表取締役社長

2009年に入社し、システム営業部に配属され1,000社以上の製造現場を回り、システム提案及び導入支援を行う。​
2015年よりクラウドソリューション事業の責任者となり、コンサルティング業務を確立させ、顧客の様々な業務効率化や働き方改革を支援。
その後、ビジネスにアウトドアを取り入れたキャンピングオフィス事業の責任者や、スノーピークグループのDX支援を推進する責任者を歴任し、2024年に代表取締役社長に就任。

坂田 真也(さかた・しんや)
Profile 坂田 真也(さかた・しんや)

代表取締役社長

2009年に入社し、システム営業部に配属され1,000社以上の製造現場を回り、システム提案及び導入支援を行う。​
2015年よりクラウドソリューション事業の責任者となり、コンサルティング業務を確立させ、顧客の様々な業務効率化や働き方改革を支援。
その後、ビジネスにアウトドアを取り入れたキャンピングオフィス事業の責任者や、スノーピークグループのDX支援を推進する責任者を歴任し、2024年に代表取締役社長に就任。

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