スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
私たち人間の「働く歴史」を振り返ってみると、時代とともにその中身は本当に大きく変わってきたと感じます。
かつては、自分の身体を動かして価値を生み出す「肉体労働」が中心でした。
それが20世紀の後半になると、知識やロジックが求められる「頭脳労働(ナレッジワーカー)」の時代へと変化しました。
そして現在、私たちはAIの登場によって、さらに大きな変化の真っただ中にいます。
これからの時代に「人間にしかできない仕事」という言葉は、もう耳にタコができるほど聞かれるようになったかもしれません。
みなさんは、「人間にしかできない仕事」と聞いたとき、どのような仕事を思い浮かべるでしょうか。
私はそのヒントが、アメリカの社会学者アーリー・ホックシールドが提唱した「感情労働(Emotional Labor)」という言葉にあるのではないかと思っています(参考文献【1】)。
感情労働とは、マニュアルどおりに動くのではなく、自分の心を動かし、相手の気持ちに寄り添いながら価値を生み出していく仕事のことです。
私たちスノーピークビジネスソリューションズは、単に便利なモノやサービスを提供するのではなく、お客様の心の琴線に触れるような「感動する体験価値」を届けたいという思いで事業を行っています。
どれだけテクノロジーが進化しても、人と人が心を通わせ、お互いに感動し合う瞬間だけは、絶対にAIに置き換えられない価値であり続けると私は信じています。
人間の「脳の仕組み」から、AIとの違いを考えてみたいと思います。
私たちの脳は、大きく分けて3つの階層に分かれていると言われています。
1つ目は、呼吸や心拍など生命維持に関わる働きを担う「爬虫類脳(脳幹・大脳基底核)」。
2つ目は、感情やモチベーション、好き嫌いを司る「大脳辺縁系」です。
そして3つ目が、言葉や論理、計画立案や問題解決を担う「大脳新皮質」です。
これは、人間が進化の過程で新しく手に入れた人間脳とも呼ばれています。
実は、現在の生成AIをはじめとするテクノロジーが爆発的に進化しているのは、まさにこの3つ目の「大脳新皮質」が担う領域です。
理路整然とした文章を作ること。
複雑な計算を行うこと。
大量の情報から最適な答えを導き出すこと。
こうしたことは、すでにAIが非常に得意とする分野になっています。
だからこそ、これからの時代は、人間が本来持っている「大脳辺縁系」や「爬虫類脳」の領域、つまり感情や感覚、身体に刻まれる「脳の内側」のセンサーを磨いていくことがより重要になるのではないかと思います。
「なんだか違和感がある」
「なぜか胸がざわつく」
こうした理屈では説明しきれない身体感覚は、私たちの内側から発せられる大切なサインです。
認知科学の分野では、身体感覚と認知が深く結びついていることが示されており、こうした感覚が意思決定や創造性に影響を与えることが分かってきています(参考文献【2】)。
言葉にならない感覚を受け止め、自分の軸で価値を判断する力。
それこそが、これからの時代に人間の価値を高める重要な力になるのだと思います。
これからの時代の経営や組織づくりには、ますます「正解」がありません。
過去のデータの延長線上にはない決断を迫られたとき、最後に頼りになるのはデータではなく、リーダーの「直観(Intuition)」です。
経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏も、理屈を超えて物事の本質を捉える「直観力」を非常に大切にしていました。
松下氏は、偏見や自分の都合に囚われず、ありのままの事実を見つめる心を「素直な心」と呼び、この心からこそ正しい決断や直観が生まれると生涯を通じて語っています(参考文献【3】)。
この「直観」は、単なる勘や思いつきではありません。
脳がこれまでの経験を総動員して行う、高度な情報処理の結果だと考えられています。
直観を磨くには多くの「経験」が必要ですが、そのステップは次の3つに分けられます。
1.膨大な経験から「こういうことかな」と共通するパターンを捉える【パターン認識】
2.そのパターンから「次はこうなるだろう」と未来を予測する【推論】
3.それを踏まえて「本当にこれでいくべきか」進むべき方向を選択する【価値判断】
このうち、1のパターン認識はAIが非常に得意です。
そして2の推論も、まもなくAIができるようになると思います。
しかし、最後の3つ目である「価値判断」だけは、倫理観や哲学、そして身体を持つ生き物として経験が深くかかわる領域です。
AIも「おすすめ」を提示することはできます。
しかし、理屈を超えて「よし、これでいこう!」と腹をくくることはできません。
だからこそ、人間の直観力を磨くことが、いまの不確実な時代を生き抜く経営に求められているのだと思います。
では、どうすれば私たちの「大脳辺縁系」を刺激して感情や感覚を呼び覚まし、松下幸之助氏の言う「素直な心」を取り戻せるのでしょうか。
その答えとして私たちが提案しているのが、自然の力や空間デザインの力をビジネスに活かす「アウトドア研修」や「キャンピングオフィス」です。
オフィスという人工的な環境から一歩外へ出て、自然の中に身を置く。
実は、それだけで人間の心理や行動は大きく変化します。
いまのビジネスパーソンは、オフィスや自宅の四角い部屋に閉じこもり、長時間パソコンの画面を見つめていることが多いと思います。
この状態では、脳のロジックを担う大脳新皮質ばかりが疲れてしまい、感情や五感が鈍くなってしまうのも無理はありません。
しかし、一歩オフィスの外へ飛び出し、美しい緑や心地いい風を感じる場所に身を置くと、人間の脳は驚くほど解放されます。
洗練されたデザインのアウトドアギアに囲まれながら、焚火を囲んだり、タープの下で語り合ったりしていると、みんなの表情がみるみる柔らかくなっていきます。
こうした変化は、環境心理学や知覚心理学の分野で、ジェームズ・ギブソンが提唱した「アフォーダンス理論(Affordance Theory)」によっても説明することができます(参考文献【4】)。
アフォーダンスとは、環境が人に対して行動の可能性を提供するという考え方です。
豊かな自然やアウトドア空間そのものが、人の五感をひらき、対話や交流を自然に促す働きを持っているのです。
普段の会議室では立場や役職が邪魔をして本音を言えなかったメンバーも、アウトドアギアに囲まれたオープンな雰囲気の場では驚くほどオープンマインドになり、心の距離をぐっと縮めていきます。
お互いの表情や声のトーン、醸し出す雰囲気を感じ取りながら、心が通い合う体験をされる方もたくさんいらっしゃいます。
こうした体験は、組織開発の土台になる「心理的安全性(Psychological Safety)」を高め、お互いを本気で信頼し合える強いチームをつくるうえで、大きな力になると確信しています(参考文献【5】)。
効率や理屈だけを追い求めてきたビジネスのあり方は、AIの登場によって大きな転換点を迎えています。
これからの時代に求められるのは、ガチガチの管理ではなく、一人ひとりが感情を豊かに表現し、直観力を磨き、自らワクワクしながら動いていく組織ではないでしょうか。
私たちが提供するアウトドア研修やキャンピングオフィスは、単なる「楽しい社内イベント」ではありません。
ビジネスの最前線で挑戦し続ける人たちが、人間本来の「野生の感覚」や「素直な心」を取り戻すための特別な場所です。
脳の内側に働きかけ、五感をフルに使いながら仲間とつながる。
そこから生まれる確かな直観力と強い絆こそが、正解のない時代を切り拓く最大のエネルギーになると私は信じています。
みなさんもぜひ一度、オフィスの外へ出てみてください。
五感を思いきりひらき、自然の中で感じる小さな違和感や心の動きに耳を傾けてみてください。
仲間と一緒に焚火を囲みながら、理屈を超えた未来のワクワクを語り合える日を、心から楽しみにしています。
【1】Hochschild, A. R. (1983). The Managed Heart: Commercialization of Human Feeling. University of California Press. (感情労働の基本概念と提唱)
【2】 Barsalou, L. W. (2008). Grounded cognition. Annual Review of Psychology, 59, 617-645.
【3】松下幸之助 (1975). 『素直な心になるために』 PHP研究所.
【4】Gibson, J. J. (1979). The Ecological Approach to Visual Perception. Houghton Mifflin.
【5】Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.