スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読み手のみなさんにとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読み手のみなさんにとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
コミュニケーションには、いくつかの型があることをご存じでしょうか。
心理学の分野では、コミュニケーションのあり方は大きく3つに分類されます。(参考文献【1】)
1つ目は、自分の意見を強く押し通す「アグレッシブコミュニケーション」です。
相手よりも自分の主張を優先するため、物事を前に進める力はありますが、時に相手を萎縮させたり、関係性を壊してしまったりすることもあります。
2つ目は、自分の意見を抑え、相手を優先する「パッシブコミュニケーション」です。
相手への配慮はありますが、自分の考えや違和感を飲み込んでしまうことで、結果的に本音が共有されず、組織が停滞してしまうリスクもあります。
そして3つ目は、自分も相手も尊重しながら、率直に考えを伝える「アサーティブコミュニケーション」です。
一般的には、このアサーティブコミュニケーションが望ましいと言われます。ただ、私は必ずしも「アサーティブだけが正解」だとは思っていません。
緊急時や危機対応の場面では、強い意思決定や明確な指示が必要になることもあります。
相手の気持ちを受け止める場面では、あえて聞き役に徹する姿勢が大切になることもあります。
大事なのは、どれか一つの型を正解にすることではなく、
状況に応じて、どのような関わり方が相手と組織にとって望ましいのか選べることだと思います。
その中でも、私たちスノーピークビジネスソリューションズが大切にしているコミュニケーションフィロソフィ(コラムVol.44)に最も近いのが、アサーティブコミュニケーションの考え方です。
組織の中では、毎日さまざまな場面でコミュニケーションが行われています。
例えば、短時間で判断しなければならない場面では、曖昧な対話を続けるよりも、責任者が明確に方針を示すことが必要です。
このような場面では、ある意味でアグレッシブな要素が有効に働くこともあります。
一方で、部下やメンバーが悩みを抱えているとき、最初から正論を伝えるだけでは相手の心は開きません。
まずは相手の話を受け止め、うまく言葉にできないような感情を聞く姿勢も求められます。
この場面では、パッシブに近い「受け止める力」が必要になると思います。
アサーティブコミュニケーションが特に重要になるのは、
正解が一つではなく、複数の立場や価値観を持つ人たちが協力しながら答えをつくっていく場面です。
高度経済成長期のように向かう先が分かって、全員が答えに向かって進むという時代ではなく、
正解がないものに答えを自分たちでつくっていく時代です。
そのときに求められるのは、単に仲良く話すことではなく、率直さと尊重が両立する対話が必要になります。
スノーピークビジネスソリューションズでは、アウトドア研修を通じた組織開発を行っています。
私たちが自然環境にこだわる理由の一つは、自然の中ではアサーティブな対話が生まれやすいからです。
例えば、タープを設営するとき。誰か一人が強く命令するだけでは、周囲は動きにくくなります。
逆に、全員が遠慮して黙っていても、作業は進みません。
自然と、
「こちらを持ってもらえますか」
「この向きの方が良さそうですね」
「少し違うやり方を試してみませんか」
という声が生まれてきます。
これは、研修用に用意された会話ではありません。
目の前にある共通の目的を達成するために、自然と生まれるコミュニケーションです。
私たちは、このような体験を「協働体験デザイン®」として大切にしています。
組織開発や人材育成の分野では、知識を学ぶだけでなく、実際の体験を通じて内省し、
次の行動につなげることが重要だとされています(参考文献【2】)。
アウトドア研修の価値は、単に非日常を楽しむことではありません。
五感を使い、身体を動かし、仲間と協働することで、
普段の職場では見えにくい関係性やコミュニケーションの癖に気づけることにあります。
「自分は意外と指示を出し過ぎていたかもしれない」
「本当はもっと意見を言ってもよかったのかもしれない」
「あの人は普段静かだけれど、周囲をよく見て支えてくれていたんだな」
こうした気づきは、座学だけではなかなか生まれません。
人は教えられて変わるというより、体験の中で気づき、関係性の中で変わっていくものだと思います。
もう一つ大切なのは、コミュニケーションは個人のスキルだけで決まるものではないということです。
人は、置かれている空間によって話し方が変わります。
長机を挟んで向かい合う会議室では、発表や報告の空気が生まれやすくなり、上座や下座、役職や立場も意識されます。
一方で、円卓やソファ、焚火を囲むようなレイアウトでは、
正面からぶつかるのではなく、同じ方向を見ながら話すような感覚が生まれます。
私たちが展開しているオフィスデザインのキャンピングオフィスは、まさにこの考え方を大切にしています。
キャンプ用品や自然素材を取り入れた空間。
偶発的な会話が生まれる共有スペース。
リラックスしながらも、創造的に話し合える場。
これらは単なる雰囲気の良い内装デザインではなく、人と人との関係性をやわらげ、対話を促すための環境設計です。
組織を変えようとするとき、多くの場合、人の意識やスキルを変えようとしますが、
場を変えることのほうが早く行動が変わることがあります。
生成AIの進化によって、私たちは多くの情報を瞬時に手に入れられることや、生み出していくことができるようになりました。
そんな時代の中で人間の価値はどこに注目されていくのか。
私は、人と人との間にあるものにこそ、人間の価値が残ると思っています。
相手の表情から感情を感じ取ること。
自分の本音を、相手を大切にしながら伝えること。
違う考えを持つ人と、未来に向けて新しい答えをつくること。
これらは、単なる情報処理ではなく、人間同士の関係性の中で生まれる営みです。
AIが正解らしきものを提示してくれる時代だからこそ、
私たちは「何を大切にするのか」「誰とどのような未来をつくりたいのか」を、
より深く対話する必要があると思います。
そのために必要なのは、自分も相手も大切にしながら、同じ目的に向かって語り合うコミュニケーションです。
スノーピークビジネスソリューションズは、
アウトドア研修やキャンピングオフィスを通じて、そのような人間らしい働き方を支えていきたいと考えています。
AI時代だからこそ、人間らしい対話の価値は、ますます高まっていくと思います。
【1】Alberti, R. E., & Emmons, M. L. Your Perfect Right: Assertiveness and Equality in Your Life and Relationships. Impact Publishers.
アサーティブコミュニケーションの代表的文献。自分と相手の双方を尊重する自己表現の考え方を整理している。
【2】Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice Hall.
経験を通じた学習、内省、概念化、実践という学習循環を示した経験学習理論の代表的文献。