スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
私たちは今、テクノロジーによって働く自由度を大きく手に入れた時代に生きています。
リモートワークやクラウドの普及、チャットによる即時のコミュニケーションは、働く場所や時間の制約を軽減し、多様な生き方を後押ししてくれています。こうした文明の進化は、人類にとって大きな財産であることは間違いありません。
一方で、利便性の高まりとともに、日々の中で「感じる」機会が少しずつ減ってきたことにも気づきます。
一日中画面と向き合い、空調の整った空間で過ごすなかで、季節の移ろい、風の音、光の陰影といった自然のサインに意識を向けることが難しくなってきました。
私たちは今、その「感じにくさ」を責めるのではなく、それに気づく感性を取り戻すことが求められているのではないでしょうか。
「感じる力」は、決して感傷的なものではありません。
それは、創造力、共感力、直感的な判断力など、人間らしい知性の土台を支える力です。
IDEOのデザイン思考やリンダ・グラットン氏の提唱する「共感」や「意味のある仕事」も、五感や感情の働きが組織や個人の価値創造に欠かせないことを教えてくれます。
トヨタの「現地現物現実」にも通じるように、現場に足を運び、自分の目で見て感じたことが判断の精度を高めていきます。これは、頭で考えるだけでなく、身体や感覚を通して得られる“気づき”が意思決定に深く影響を与えることを示しています。
また、ホンダの「ワイガヤ」文化についても肩書を超えて本音でぶつかり合うその対話の場には、頭だけでなく“感じること”から始まる思考の深まりがあります。
感情の揺れや違和感を出発点にして、問いが立ち、仲間との対話を通じて新しい発想が形になる。
さらに、そのような場から生まれた企画は社内でプレゼンする際にも、評価者から厳しい指摘があったとしても、仲間たちと熱心に語り合って生まれた企画だからこそ覚悟を持って推進したいという熱のこもった企画となり、事業として成功するまでの原動力や推進する仲間とのつながりができます。
それはまさに、「感覚」こそが「考える力」や「つながる力」の源泉であることを教えてくれます。
つまり、感覚を磨くことは、これからの社会に必要な「考える力」や「つながる力」を高めることにつながるのです。
私自身、この事業の立ち上げ期に経験したある出来事が、今も強く心に残っています。
それは、軽井沢のキャンプ場で新緑の季節にキャンピングオフィスを行ったときのこと。見渡す限りの輝く緑の中、そよ風が心地よく吹き抜ける中で、芝生の上にテーブルと椅子を置いて、パソコンに向かって仕事をしていました。
すると、自分の体の芯からエネルギーが湧いてくるような感覚が訪れました。目の前の仕事にかつてないほど深く集中しながらも、視野は広く、発想が次々に湧いてくる。その状態を言葉にするならば、「最高のコンディションで働く」ということだったと思います。
このとき私は確信しました。自然の中で五感をひらくことが、単なる癒しではなく、仕事の成果に直結する「働く力」を呼び覚ますのだと。そして、この体験をもっと多くの人に届けたいと、強く思いました。
私たちは、テクノロジーの力を否定しているのではありません。
むしろ、テクノロジーがあるからこそ可能になった柔軟な働き方に、自然の力を掛け合わせることで、“人間らしく働く”という本質をさらに高めていけると考えています。
たとえば、自然の中で生まれた直感や気づきが、テクノロジーを通じて広く共有され、組織全体の創造性につながる。
あるいは、オンラインの打ち合わせを通じてある程度の関係が構築され、そこから焚火を囲んだリアルな時間を通じて、さらに深い信頼関係に育っていく。その信頼関係が構築され、次々と意見が“場”に出され、新しいイノベーティブなアイデアが生み出されていく。
そんなシーンを私たちはイメージしています。
今、私たちに必要なのは「戻る」ことではなく、「取り戻す」ことです。
文明の進化がもたらした豊かさを享受しながら、自分自身の感覚や感性をもう一度ひらき、人間らしい働き方へと整えていく。
“キャンピングオフィス”は、その第一歩となる体験です。
五感を通して、自分を感じ、仲間とつながり、未来を創造する。
そうした働き方が、組織にも、社会にも、そして私たち自身にも、豊かさをもたらしてくれると信じています。