スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
「会社のカルチャーを変えたい」というご相談を、多くの経営者や人事の方からいただきます。
ビジョンを掲げ、社内制度を整え、評価指標を変え、数多くの座学等による研修を行い、一人ひとりにインプットの時間を多くとっても、なぜか現場の空気は変わらない——。特に大手企業は優秀な人たちを大量に採用し、その人たちにさらに学習機会を作り、そんな人材がたくさんいれば社会に対応する変革を起こす組織文化を作れる”合理的”な筋書きができているはず——にも関わらず「変わることができないんです」というお悩みを聞くことが増えました。
私たちは、組織文化の本質は「意識」や「言葉」ではなく、“体験の積み重ね”にあると考えています。
頭で理解するだけはなく、身体と感情で理解する。共に感じ、共に動いた時間こそが、人と組織の関係性を深く変えていくと思います。
効率化や合理化が進む現代の組織では、「みんなで一緒にやる」時間が極端に削られていると感じます。
かつて日本の企業は、職場の仲間と一緒に語り合い、汗をかくことを通じて文化を育み、時には仕事とプライベートの垣根も無くコミュニケーションを多く取っていくことで関係性や組織風土を作っていましたが、そうした風土は徐々に薄れました。
一方で、欧米ではオフサイトミーティングや全員参加型の議論文化が根づき、今ではそれを“逆輸入”するかたちで、日本の企業も組織文化の再構築に取り組み始めています。
しかし、形式だけをまねしても、文化は変わりません。文化とは、「ともに体験すること」でしか育たないのです。
私たちが提供している「協働体験デザイン」は、自然の中で五感を働かせながら、仲間とともに非日常の状況における予測不能な課題に向き合う時間です。
風の向きに応じてタープの高さを調整したり、焚火を囲みながら語り合ったり。
そこでは、日常の役割や立場を超えた関係性が自然と生まれます。
例えば、ある研修で強風が吹き始めたとき、チームメンバーがそれぞれ率先して行動し、タープの高さを調整したり、机の角度を変えたり、紙を押さえる重りを探したりしていました。
しかし、本来リーダーである上長だけが率先して動けず、その様子を見て、後で自分ができそうなサポートをし始めました。
意外と上長は日常の仕事はできても、このような自然の中の突発的な動きには慣れていないということがよくあります。
このような場面では、他者の行動を観察することで自分の行動を変えていく「代理的経験」が生まれます。
心理学者バンデューラが提唱したこの概念は、自分も行動できるという「自己効力感」を高める要素でもあります。
先ほどの研修の例ではリーダーである上長がチームメンバーの行動を観察して、「自分も何かできることがあるはずだ」という代理的経験を踏まえて予測不能な環境に対する自主的なサポートをしていました。
これによって上長の自己効力感も高まりながら、予測不能な社会環境に対する主体的な行動力も身に着けられるきっかけになったと思います。
まさに、他者との協働体験の中でこそ得られる気づきです。
アウトドアでの研修では、天候という“揺らぎ”が常に伴います。
その変化にどう向き合うか——自分が何を感じ、どう解釈し、どのように行動するかが問われます。
これは、予測不能な事業環境にも通じます。
トラブルや変化が絶えない現代において、組織には「指示待ち」ではない、自ら解釈し、率先して動く主体的な人材が必要です。
そのためには、自然の中で判断を繰り返すような経験が、非常に有効です。
五感で感じ、身体で学び、仲間と協力して答えを導き出す。
こうしたプロセスこそが、変化対応力や共創性を育む土壌になります。
チーム全体がこの体験を通じて一体感を得ながら、「このチームだったら予測不能な事態でも主体性をそれぞれが発揮して困難な状況があっても必ず脱出することができる」という腹落ちの状態をつくることができた組織は非常に強い組織になっていきます。
組織文化は、理念やルールで強制するものではなく、「体験を共有する場」と「意味のある時間」によって自然と形成されていくものだと思います。
その“意味のある時間”をつくる最も効果的なフィールドが、私たちが提供する自然の中の協働体験です。
これからの時代、成果を出すための組織文化は、指示命令ではなく、「自ら動きたくなる空気」や「一体感のある風土」によって支えられていくと思います。
その起点となるのが、共に挑戦し、共に成し遂げる体験です。
私たちはこれからも、自然の力と人の可能性を信じ、協働体験を通じて「人が人らしく働ける組織文化」づくりに伴走していきたいと思います。