「リスキリング」と「リカレント教育」。
どちらも社会人の学び直しを指す言葉ですが、研修の計画に落とし込もうとすると、違いが分かりにくいと感じることもあるのではないでしょうか。
2つの違いを整理するうえでは、「何のために学ぶか」「どのように学びを進めるか」がポイントになります。
リスキリングは、事業や仕事の変化に対応するために必要なスキルを身につける取り組みで、企業が主導するケースが多くあります。一方、リカレント教育は、社会人が必要に応じて学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けることです。
この記事では、2つの違いを3つの軸で整理したうえで、企業の判断軸、研修に活かす進め方、つまずきやすいポイント、導入事例を紹介します。
リスキリングとリカレント教育の違いとは?企業研修への活用方法
リスキリングとリカレント教育の違い|3つの軸で整理
リスキリングとは、新しい仕事や、仕事の大きな変化に対応するために、必要なスキルを身につける(身につけさせる)ことです。
リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあとも、必要に応じて学び直し、仕事で求められる能力を磨き続ける社会人の学びです。
厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」では、リスキリングとリカレント教育をあわせて「学び・学び直し」と位置づけ、企業主導の職業訓練と、労働者の自律的・主体的な学びの両方が重要としています。(※1)(※2)
2つの違いは、次の3つの軸で整理できます。
① 主体(誰が学びを進めるか)
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・リスキリング:企業が必要なスキルを明確にし、学ぶ機会を用意することが多い
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・リカレント教育:個人の意思やキャリアの希望を起点に学ぶことが多い
② 目的(何のために学ぶか)
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・リスキリング:変化する事業や仕事に対応するため
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・リカレント教育:仕事で求められる能力を磨き続けるため
③ 学ぶ内容(何を学ぶか)
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・リスキリング:事業や業務の変化に必要なスキルが中心
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・リカレント教育:語学や資格など、個人のキャリアに合わせて幅広く
また、これまでの知識や考え方を見直す「アンラーニング」も、リスキリングと組み合わせて考えたい取り組みです。
詳しくは「アンラーニングとは?意識改革は『学びほぐし』の場づくりから」の記事をご覧ください。
リスキリングとリカレント教育|企業はどちらに取り組むべきか
企業の人材育成として、どちらに取り組むかは、「何が変わるのか」から考えると整理しやすくなります。
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・事業や事業や業務が変わる場合:事業に必要なスキルを明確にし、リスキリングを計画的に進めます。
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・社員のキャリア自律を支えたい場合:学習機会の提供や費用の補助など、社員の主体的な学び直しを支援する制度を検討します 。
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・両方の目的がある場合:事業に必要なスキルはリスキリングで押さえ、個人の学びを支える制度を補う形が考えられます。
学ぶ時間をつくる制度について、常用労働者30人以上の企業を対象にした調査では、教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%、教育訓練短時間勤務制度は4.7%です。時間の調整を伴う制度は、まだ広がっていない状況がうかがえます。
また、自己啓発を実施した労働者は35.5%(正社員は43.3%、正社員以外は15.9%)です。
ガイドラインは、自律性や主体性を重んじることは学びを労働者任せにすることではなく、労使の協働が必要だとしています。
個人の主体性を尊重しつつ、企業が研修として学びの機会を用意することも、選択肢の一つになります。(※1)(※3)
なぜ今、企業研修でリスキリングが必要なのか
DXが進み、デジタル技術の活用が、生産、販売、営業、管理など、あらゆる場面で求められるようになりました。こうした急速で広範な変化は、社内で上司や先輩が培ってきた経験やスキルの範囲を超えるものだと、ガイドラインは指摘しています。
日本企業は、日常業務を通じて学ぶOJTを重視してきました。一方、リモートワークの浸透などで、上司や先輩の仕事を見て学ぶ機会が減っている可能性もあります。
そのため、OJTに加えて、業務を離れて受けるOFF-JTや、自己啓発の支援を充実させる必要があるとされています。
学びの支援は、一部の人材に限りません。雇用形態にかかわらず、すべての労働者を対象に支援することを企業に求めています。(※1)
リスキリングを研修に活かす4ステップ
研修としてリスキリングに取り組むときは、次の4つのステップで進めると整理しやすくなります。
① 目的と必要なスキルを可視化する
仕事に必要な能力・スキルをできる限り明確にし、学びの目標を関係者で共有します。「これから必要なスキル」と「現在社内にあるスキル」の両方を整理します。
② 学び方を組み合わせる
研修は講義やeラーニング、実践型のプログラムなどを組み合わせ、必要に応じて外部機関の活用も検討します。知識を学ぶだけでなく、実践や対話の機会を設けることも大切です。
③ 学ぶ時間と環境を整える
研修として学ぶ時間は労働時間にあたる点に留意し、業務との両立を図ります。費用面では、人材開発支援助成金などの公的支援を活用できる場合があります。要件は年度で変わるため、厚生労働省の最新情報の確認が必要となります。
人材開発やリスキリング等の助成金については、「リスキリングの助成金を知り、人と組織の可能性を広げる。」の記事で紹介しています。
④ 現場で使う機会をつくり、効果を確かめる
関連部署への異動や社内公募、新規プロジェクトへの参加など、学んだスキルを実践できる機会を設けます。その後、職場でどのように活用されたかを評価し、次の研修設計に反映します。
つまずきやすい3つのポイントと対策
リスキリングの研修では、つまずきやすい点が3つあります。
① 学ぶことへの戸惑いがある
学びを継続できるよう、定期的な声かけや相談の機会を設けるなど、社員を支える仕組みが大切です。企業が求める方向性と本人の希望がずれている場合は、必要性を丁寧に説明し、十分に話し合うことも大切です。
② 学んだ後に使う機会がない
学んだ内容を業務で実践すると、スキルの定着も期待できます。企業が実践の場を用意し、1on1などを通じて、学んだスキルを業務で活用できるよう支援することも大切です。
③ 学びを試し、共有できる関係性がない
学びを促進するうえでは、労働者同士の学び合いや、学びの成果の共有も重要とされています。その土台には、挑戦や相談がしやすい関係性があります。
心理的安全性を「場」から考える視点は、「VUCAからBANIへ——心理的安全性は『場』からつくれる」の記事で紹介しています。
eラーニングなどで知識を身につけ、体験型研修で実践と対話の機会を設けると、学びを「使える状態」にしやすくなります。
詳しくは「『知る』から『動ける』へ。人材育成の成果を変える『体験型研修』」の記事をご覧ください。
新しい手法を体験し、事業アイデアを磨く
株式会社トヨタシステムズ様|導入事例
トヨタグループのIT戦略をサポートするトヨタシステムズ様のPLM・CAD本部では、7つの部門から選ばれたメンバーによる「シナジー創出活動」を進めていました。初年度は、企画が既存の活動の延長線上に収まりやすいことが課題でした。
そこで、メンバー13名が1泊2日のアウトドア研修(CAMPING OFFICE HAMANAKO)に参加しました。
プログラムは同社の目的に合わせて専用に設計し、顧客像を具体化する「ペルソナ分析」や、前提を覆す「逆転の発想」などに取り組みました。
研修後の事業アイデア審査会では、研修で議論した中の2つのテーマが選ばれ、事後アンケートでは、参加者全員が「チームの一員だと感じる」などの点を評価しました。
この取り組みを通して、新しい手法や視点を体験的に学び、事業アイデアの創出につなげることができた事例です。
詳しくは「非日常×専用プログラムで、枠を越えたアイデア発散に挑め」の記事をご覧ください。
よくある質問
Q. リスキリングは、何から始めればよいですか?
まず、事業や業務の変化を踏まえ、社員に必要なスキルを明確にします。そのうえで、学習目標を共有し、研修方法、学習時間、学んだスキルを実践する機会を設計します。
Q. リスキリングは、一部のデジタル人材だけが対象ですか?
一部の人材に限りません。学び・学び直しは、雇用形態にかかわらずすべての労働者が対象という考え方が、ガイドラインでも示されています。対象や学ぶ内容は、必要なスキルを可視化して決めるのが良いでしょう。
Q. 研修の成果は、どのように確認すればよいですか?
学びの進み具合に加えて、学んだスキルが職場でどう活かされたかを、労働者も含めた関係者で評価することが重要とされています。上司との面談で目標の達成度合いを確認する方法もあります。
まとめ|リスキリングを研修で成果につなげるために
リスキリングとリカレント教育は、学びを主導するのが企業か個人か、何のために学ぶかが異なります。企業研修では、事業や業務の変化に必要なスキルを定めて進める、リスキリングが軸になります。
導入にあたっては、必要なスキルの可視化、学習方法の選定、学ぶ時間と環境の整備、実践機会の確保という4つのステップで進めると良いでしょう。
学んだことを試して共有できる関係性も、研修を成果につなげる鍵と言えます。
リスキリングの学びを、現場で使える形にしませんか
スノーピークビジネスソリューションズでは、自然の中での対話や協働体験を取り入れたアウトドア研修を提供しています。学んだことを職場で試し、共有できる関係性づくりまで、目的や対象者に合わせたプログラムをご提案します。
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参考文献
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※1 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(令和4年6月策定、別冊は令和8年4月改訂)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/guideline.html
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※2 厚生労働省「リカレント教育」(2026年10月26日参照)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18817.html
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※3 厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」(令和8年7月31日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html

