物流やアパレル業界等で活用が広がる自動認識技術RFID。タグに取り付けられた電子情報を電波によって非接触で読み取ることができ、製品のトレーサビリティ確保や在庫管理、店舗のセルフレジなどに広く利用されるようになってきました。
スノーピークでは、商品の値札にいち早くRFIDタグを導入しておりましたが、物流拠点「スノーピーク オペレーションコアHQ2」においても、読み取り作業をより効率化するために、ゲート型のRFIDリーダーを新たに導入することになりました。
スノーピークでゲート型のRFIDを使用したシステムを導入するのは初めての試み。そのため、予期せぬ障害やエラーを想定し、段階的にシステムの開発・導入・定着を進めました。その結果、無事にシステムが機能し、アパレル製品における在庫管理の効率化を図ることに成功しました。今回はスノーピークビジネスソリューションズが支援したゲート型RFIDリーダーを使用したシステムの開発から導入、定着までのプロセスをご紹介します。
新潟県見附市にある「スノーピークオペレーショコアHQ2」は、スノーピーク製品の物流に関わる中核機能を集約した戦略的拠点です。スノーピーク製品の入出荷、検品、流通加工などは日々この拠点で行われており、その中でも毎月3万点以上入荷するアパレル製品は、アウトドア製品等と比べてアイテムが非常に細かく、さらにサイズやカラーの展開があり、在庫管理は煩雑になりがちでした。まず、以前の業務の課題点を見てみましょう。
・段ボールや袋を開封し、目視で1点ずつ検品
→検品のために膨大な数の荷物の積み下ろし作業をし、一箱ずつ、一袋ずつ開封して目視でカウントするため、作業負担が大きい
・全量チェックを行わない場合もある
→段ボールの入り数でカウントをかけることもあり、在庫管理ミスが生じてしまう
これらの課題を解決するために導入を決めたのが、ゲート型のRFIDリーダーである株式会社エフテクトの「エフテクトゲート」です。RFIDリーダーには、ハンディ型、据え置き型などいくつかの種類がありますが、ゲート型RFIDリーダーは通路などに設置したゲートを通過させることで対象物のタグを一括で読み取ることができ、作業の効率化を見込むことができます。また、入荷予定のデータと照合することで、タグの破損や検品漏れを未然に防止でき、在庫管理の精度向上が期待できます。
ゲート型RFIDリーダーの導入は、スノーピークにとっても、スノーピークビジネスソリューションズ（以下、SPBS）にとっても初めての試みでした。そのため、一つひとつ課題をクリアしていく必要があり、現場でのフィッティングを重視し、システムが定着するまで現場に寄り添いながらシステム導入を進めていきました。そのポイントは3つあります。
1.スモールスタートで段階的にアップデート
完成してからシステムを納品するのではなく、ベースアプリをもとに短期間でテスト版を開発。開発が間に合った部分からトライアルを用意してテストを繰り返し、現場にフィットするシステムを段階的に構築。
2.共創開発
段階を踏むステップ設計によって、現場から具体的かつ細かな要望を都度引き出してシステムに反映。また、機能ベースの提案だけでなく、検品する製品の動線、作業手順といった現場での運用チェックを一緒に行い、運用面でも問題がないかを確認しながら進行。
3.システム導入後も改修を行い、定着までサポート
システムを導入して終わりではなく、導入後に生じた新たな課題にも対応してシステム改修や運用のアップデート。現場にシステムが定着し、自発的な改善が進む自走型の運用ができるまでをサポート。
ゲート型RFIDリーダーの導入プロジェクトがスタートしたのは2019年夏のこと。そこからテストを繰り返し、年末からは徐々に本番稼働をスタート。当初の予定通り、年末の棚卸にもゲート型RFIDリーダーを活用することができました。そこからさらに細かい調整や機能の追加などを1年ほどかけて行い、2020年の年末にはシステムが定着し、現在は自走型の運用が行われています。
ゲート型RFIDリーダーを導入したことで、梱包を開封して1点ずつ検品していた以前と比較して、アパレル製品の入荷出荷検品の作業時間を半減させることができました。
アパレル製品の物流量はゲート型RFIDリーダー導入前よりも格段に増えているにもかかわらず、作業時間の短縮を図ることができており、物流拠点の業務改善に寄与しています。
さらに、以前は段ボールの入り数でカウントしていた製品もゲートを通すだけでタグを読み取ることができるため、物流におけるミスが減り、棚卸の差異率が90%以上削減されるなど、在庫管理の精度向上を同時に実現しました。
ゲート型RFIDリーダーの導入・定着が成功したことで、物流拠点では業務改善が進み、実際に使用している現場からうれしい声が届いています。
入出荷検品では、商品タグを一つずつハンディターミナルで読み取っていましたが、今はゲートに通すことで一括して読み取りが完了するため、作業がとても楽になりました。
日々の入出荷検品だけでなく、棚卸の際にもゲート型RFIDリーダーを活用していますが、手作業で数える必要がなくなったため、棚卸の作業時間は半分以下に削減できています。
在庫管理のための作業時間が大幅に短くなったため、人員の割り当てに困ることが減り、現場がうまく回っています。
また、システムがシンプルで分かりやすく、簡単に使いこなすことができるため、新人教育で説明にかける時間を削減することができ、より有効に時間を使うことができます。
スノーピークの物流拠点にゲート型RFIDリーダーを導入し、アパレル製品の在庫管理の効率化と精度向上を実現したプロジェクトについてご紹介しました。今回の事例のように、SPBSのGENBA改善コンサルティングは、現場との共創開発を大切にし、スモールスタートでテストを繰り返しながら現場の要望を引き出し、現場にフィットするシステムを開発しています。そして、導入後は現場改善が自発的に進む自走型組織を形成できるよう定着支援までを一貫して行なっています。
