スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
ハイブリッドワークが浸透した現代では、オンライン会議やチャットコミュニケーションは企業活動に不可欠な手段となりました。移動時間を削減し、地理的制約を取り払い、迅速な意思決定を可能にする──これらは間違いなくオンラインの大きな利点です。
実際、National Bureau of Economic Researchの調査(Morikawa, 2020)では、リモートワーク環境下で従業員の会議時間は平均で20%減少し、個人作業に充てられる時間が増えたと示されています。
一方で、オンラインコミュニケーションの増加は「副作用」も生み出しました。スタンフォード大学のJeremy Bailenson教授(2021)は、オンライン会議の多用が「Zoom疲れ」を引き起こし、心理的ストレスや疲労感を強めると報告しています。
またMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究(Olguín & Pentland, 2010)では、オンライン会議では非言語的なシグナル(表情、視線、沈黙の間合いなど)が伝わりにくく、相互理解が浅くなる傾向が明らかになっています。
効率を追求するあまり、関係性や信頼が希薄になっていく──これがオンラインに偏りすぎた現代の大きな課題です。
MITのダニエル・キム氏(1998)の「成功循環モデル」によれば、組織の成果は「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」という循環によって生み出されます。(Vol.17参照)
つまり、いかに効率的に情報をやり取りしても、関係の質が低ければ成果は頭打ちになるということです。
オンライン環境では、情報伝達の効率は高まる一方で、関係の質を高めるプロセスが欠落しやすい。だからこそ、オフラインでのコミュニケーションの価値が再び注目されています。
スタンフォード大学のPentland教授(2012)の研究でも、対面での雑談や食事を共にする機会の多いチームほど創造性や協力関係が強まり、生産性も高まるとされています。
人間同士の「偶発的な触れ合い」や「非効率に見える交流」こそが、組織の未来を形づくる力を持っているのです。
私たちスノーピークビジネスソリューションズが提供するアウトドア研修やキャンピングオフィスは、まさにこの「人と人とのつながり」を意図的に取り戻す場です。
参加者からはこんな声をいただきました。
「タープの下で会議室をつくるとき、机や椅子を協力して並べる。食事の準備では、食材を切る人、カトラリーを並べる人、火を起こす人が自然と現れる。役割を明確に決めているわけではないのに、やることが多いから接触点が増え、自然とつながりが生まれる」
まさに「小さな協力行為の積み重ね」が信頼と関係性を築いていくということです。
私たちのタグライン「自然と、仕事が、うまくいく。」の「自然と」は、まさに人と人とのつながりを生み、信頼を育てる力を表しています。
アウトドアという環境は、日常業務のタスク分担を超えて自然な助け合いを引き出し、そして、オフラインでのコミュニケーションの質を飛躍的に高めます。
もちろん、オンラインを否定しているわけではありません。私たち自身、Microsoft 365のリセラーパートナーです。
タスク管理や情報伝達にはオンラインは最適です。問題は、それに偏りすぎてしまうことです。経営者に求められるのは「効率のためのオンライン」と「信頼関係のためのオフライン」を意識的にデザインする視点です。
例えば、定例の報告会議はオンラインで効率的に行う一方で、部門横断の合宿や焚火を囲むオフサイトミーティングを定期的に設ける。あるいはキャンピングオフィスのように、オフィス空間そのものを人と人が自然とつながれる環境へとデザインする。
一見「非効率」に見えても、長期的には人と組織のエネルギーを高め、成果を持続的に生み出す原動力になります。私たちは長年この取り組みを実践しており、その効果を確信しています。
私たちが目指すのは、効率と人間性の両立です。オンラインは効率性を担保し、オフラインは人間らしさを回復する。両輪を回すことで初めて、組織はしなやかに成長し続けると考えます。
ハイブリッド時代において、経営に問われているのは、単なる情報処理ではなく、「人がつながる場をどう戦略的に設計するか」です。
効率だけでは未来は拓けません。
偶発的な触れ合いや非効率に見える営みこそが、組織を強くし、創造性を引き出す原動力です。
焚火の炎のゆらぎの中で交わされる言葉、食事を共につくるときに自然に生まれる協力。
それらはすべて、オンラインでは代替できない「人間らしい対話」の原点です。いまこそ、その力を経営に生かすときです。