スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
最近、お客様から「部門を超えたコミュニケーションを深めるアウトドア研修を実施したい」という相談が、以前にも増して多く寄せられるようになりました。
働き方の多様化やテレワークの浸透により、部門間の連携や相互理解をどう深めるかが、多くの企業で重要なテーマになっています。また、組織間の人材流動が少なく、同じ部門で長年過ごすことでサイロ化が進んでしまったという構造的な課題も耳にします。
組織が成長する過程で避けがたいのが「部門間のサイロ化」です。
情報や判断基準が部門ごとに閉じ、他部署との連携が滞るようになります。その原因を「コミュニケーション不足」と片づけてしまうケースも少なくありません。しかし、単に会議や報告の回数を増やすだけでは、壁はなかなか崩れないのです。
私たちが多くの企業へアウトドア研修を提供して気づいたのは、サイロ化は「言葉」だけでは解消しにくいということです。必要なのは、組織のメンバーが同じ場で一緒に行動し、感覚を共有する“協働体験”です。
サイロ化は、目に見えない形で組織全体のパフォーマンスを下げてしまいます。例えば──
・製品開発と営業が連携できず、顧客要望が開発に届くまでに時間がかかる。その結果、市場投入が遅れ、ビジネスチャンスを逃す。
・人事と現場マネジメントの間で、採用方針や育成プランの認識がずれる。その結果、優秀な人材を採用しても定着せず、離職につながる。
・IT部門と業務部門の距離が遠いと、システム導入が「現場の声」と乖離する。その結果、せっかくの投資が使われないツールに変わってしまう。
こうした例は多くの組織で見られます。
背景には、互いの業務や判断基準を理解しないまま、「自分の領域だけを守ろう」とする意識が強まってしまうことがあります。サイロ化とは、そうした無意識のうちに心の距離が遠くなってしまっている状態なのです。
私たちが提供するキャンピングオフィスやアウトドア研修は、この「心の距離を縮める」ための仕掛けです。
タープを張り、火を起こし、食事をつくる──そんな“協働体験”の中では、役職や部門の壁は意味を持ちません。誰かが声をかけ、誰かが段取りを考え、自然と役割分担が生まれていきます。
一見、業務と無関係に見える作業ですが、そこにあるのは「信じて任せる」「自ら役割を見つける」「ともに成功を分かち合う」という組織に不可欠な行動の原型です。
人は頭で理解するだけでなく、身体で体験することで納得度が増し、意識や行動が変わります。
部門を越えて課題を解決する体験は、普段の会話だけでは届かない部分に作用し、心の距離を縮め、組織全体としての一体感を生み出します。
協働の成功体験は一時的な盛り上がりで終わりません。意識や行動の変容をもたらします。
・部門を超えて意思疎通が可能になり、複数の視点から物事を捉えられ、他部署や顧客の状況を踏まえた判断ができるようになる。
・視座が上がり、全体最適を意識した行動が自然に取れるようになる。
結果として「情報は早めに共有しよう」「今の段階で相談しておこう」という行動が習慣化します。これは“心の距離”が縮まった証拠です。
先ほど挙げた“よくある悪影響”も、関係性が深まったチームでは次のように変わっていきます。
・開発と営業の間では、試作品を囲んで率直に意見を交わし、顧客の声を即座に開発へ反映する。
・人事とマネジメントは、採用段階から育成計画を共に描き、配置後のフォローまで連携して取り組む。
・IT部門は業務メンバーと協働し、現実的な運用設計と最適化を行い、現場に根ざしたシステムを共創する。
「どうせ伝わらない」と情報を抱え込むのではなく、「この段階で共有したほうが全員が動きやすい」と判断し、迷わず伝えられるようになる。
その一歩を分けるのは、まさに「心の距離感」だという点に、多くの方が共感いただけるのではないでしょうか。
組織における「場のデザイン」や「関係のデザイン」は、即売上に直結しないため、後回しにされがちです。
しかしMIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム氏が示す「成功循環モデル」(Vol.17参照)でも、成果を高める起点は「関係の質」にあるとされています。実際に、信頼を深める接点を意図的に増やすことで、サイロ化を防ぎ組織全体の成果を高めている企業が増えています。
つまり先頭を走る企業は、この「重要だが緊急度の低い課題」にあえて着実に取り組んでいるのです。
私たちスノーピークビジネスソリューションズは、自然(非日常)とオフィス(日常)を融合させたプログラムを通じて、組織が持つべき“部門間のつながる力”を引き出したいと考えています。
サイロを壊す第一歩は、同じ空気を吸い、同じ風景を見て、同じ課題を解決することから始まります。
組織の未来を動かすのは、みんなで一緒にやる “協働体験”です。