---人間の幸福に自然が影響するとのことですが、人間にとって自然はどのような存在だと思われますか?
自然の中にいると人間は、狩猟採集時代の本能が沸き立つのか、おおらかで自由でイノベーションを起こすマインドセットが持てるようになります。コンクリートに囲まれた都会より自然に囲まれた環境の方が、視野が広がり想像力がかき立てられると感じたことはありませんか?それは人間本来の感覚です。
「自然が好き」というと、趣味の一つのように思われるかもしれませんが、私は全く次元が違うと思っています。この感覚は人類の本質に通じるもので、幸せの研究において、自然は人間の幸せの根源にある重要な要素なのです。
---現代の社会課題に対して、幸福学と自然はどんな役割を果たしますか?
日本の社会課題の一つは、失われた30年と言われるように日本全体が活力を失っていることです。実際、日本人は子どもも含めて自己肯定感が低く、高いモチベーションで働く人が少ない。自殺率も高いといった調査結果が出てきます。戦後、日本は安全で健康な国、高度な社会をつくってきたはずなのに、その国民が自信をなくしてしまっているのです。
これらの課題の解決には、ウェルビーイング(幸福)が非常に重要です。〈やってみよう〉〈ありがとう〉〈なんとかなる〉〈ありのままに〉の4因子を満たした社会をつくり、自然の中で幸福度を高めることが重要なアプローチであることは明らかです。
マクロ視点で見れば、人類は自然を破壊してコンクリートの中に密集して住むうちに、自分もほかの動物とともに生きる生物だということを忘れてしまった。それがさまざまな問題を地球規模で起こしていることはご承知の通りです。
自然とふれあい、人間が本来の生きていた場所を思い出すこと。それは人間性を取り戻す試みであり、人類が自然を農地に変えて以来となる、1万年ぶりの大きな変革とも言えます。
---自然が持つ力に注目した弊社では、ビジネスにも応用できないかとアウトドア会議の提案を始めました。
スノーピークのミッションである「人間性の回復」は、先ほどお話ししたように、これからの人類にとって非常に大切な活動だと考えています。
近代以降の都市への一極集中、自然からコンクリートへという時代は終わり、都市から地方へ、コンクリートから自然へという方向に世の中は動いています。時代を先取りしたアウトドア会議は、人々の働き方を幸せにし、人間性の回復につながる大きな一歩と言えます。
私自身も、新潟県のスノーピーク本社で開催されたLIFE EXPO2021で、自然の中で働く魅力を実感しました。現地でキャンプをしながら、大自然を背景にリモートで講演をしたり、PCを持ちこんで仕事をしたり。合間に森の中を散策し、他の方の講演を聞くこともできました。リラックスしながらも非常に仕事がはかどり、まさに未来の幸せな働き方を体験させていただきましたね。
>>幸福学の前野教授も驚いたアウトドア会議の効果とは? Vol.2に続く
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