---エンゲージメント向上が課題としてあるときに、どういった施策が必要なのでしょうか?
坪内:私たちがよく人事の方にお話しする、ハーズバーグの『二要因理論』(※上図)というものがあります。仕事の満足度に関わる「衛生要因」として、給与や労働条件、福利厚生なども大事ですが、一方で「動機付け要因」である仕事のやりがいが上がらないと、"今ここにいる意味"を感じられなくなる。
ですから、私たちが提供するアウトドア研修の中では自己内省をしてもらって、一人ひとりが自分の根源性に気づくところから始めて、"今ここにいる意味"を考えてもらう取り組みをしています。
吉田:ハックマンとオルダムの『職務設計の中核5次元』の中では、「仕事の有意義性」「自律性」「フィードバックを受けていること」「はじめから終わりまで一貫して携われること」「創意工夫が必要であること」という5つを、内発的動機づけを高める要素として挙げています。これらを備えた魅力的な仕事を設計できているかということを考えてみてもいいと思います。
例えば、本質的に面白くない仕事が社内にあっても、見て見ぬふりをしていたり、「私たちも苦労してきたんだから、若手も苦労すべき」とそのまま放置されている状況も起こりがちです。人が辞めやすい部署があるのであれば、「やりがいを持ちやすくするには…」という観点で点検してみるのは効果的だと思います。
坪内:もう一つ組織のエンゲージメントを高めるカギとなるのは、課長や部長といった役職者クラスの方々です。経営者の言葉を自分の言葉として咀嚼し部下に伝える役割を担うのが役職者クラスの方々で、まずはその層にターゲットを絞って施策を行うのも有効です。
また、離職者が多いということであれば転職を考える時期に当たる30歳前後や40歳前後に向けた施策で、あらためて会社で何を成し遂げていきたいかを考えてもらうのもいいですね。
吉田:エンゲージメント向上施策を何のためにやるのかということに立ち返ることも重要ではないでしょうか。人材が流動的である方が停滞せずに事業が前に進むということだってあります。
むやみにエンゲージメントを高めるということではなく、その先で実現したい組織の姿であるとか、もっといえば組織の中でも誰のエンゲージメントを高めることを優先するのかといった解像度を上げることが具体的な施策を描くときの道筋になると思います。
>>対談後編に続く