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<人事図書館対談・後編>複雑化・深刻化する人事課題に一人で悩まず、仲間をつくろう

<人事図書館対談・後編>複雑化・深刻化する人事課題に一人で悩まず、仲間をつくろう

人材採用や人材育成、組織開発といった人事領域の課題は、社会の人手不足や競争激化、組織の多様化といった背景の中で、一筋縄ではいかなくなっています。さらに、コンプライアンスやメンタルヘルス対策など、昨今の新たな組織課題に向き合うことも求められており、疲弊する現場の声が漏れ聞こえてきます。 

 

では、これからの時代に人事担当者が組織課題に向き合うにあたって、どのような施策が必要なのでしょうか。

 

今回は、人事領域の第一線で活躍し、現在「人事図書館」のオープンに向けて活動する(※)株式会社Trustyyle代表吉田洋介氏をお迎えし、スノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)の坪内と対談を実施。人事に限らず、社会で働く誰もが心に留めておきたい示唆に富んだ対談となりました。 (前編

 

(※取材:2024年2月)

人事施策には問題意識、目的意識が重要

---どんな人事施策をするにしても、問題意識、目的意識が重要なんですね。

 

坪内:確かにそうですね。「エンゲージメントサーベイをやったら数値がよくなかったのでなんとかしたいです」といって相談に来られたりもしますが、具体的な課題を聞くと出てこないことがあります。数値は指標にはなりますが、数値に左右されて本質が見えなくなってしまうのは危険ですね。

 

吉田:サーベイなどで組織を可視化していこうというトレンドがあるので、そういう話は増えていきそうですね。エンゲージメントサーベイは健康診断のようなものなので、なんとなく受けるのではなく、「問題があるかもしれないから調べてみよう」とか「手を打ちたいから現状を把握しておこう」など、問題意識や仮説をもって取り入れるのがいいと思います。問題意識がないまま行うと、施策自体が目的化してしまって、人事担当者自身も何のためにやっているのだろうと疲弊してしまいますし、社員の時間や手間を無駄に奪って批判を受けることになりかねません。 

 

坪内:普段人事の方と接していると、愛情深い方が多いんです。社員のことを考えて施策を練っていますし、組織が目指す状態になるにはどうしたらいいのかを一緒に熱く議論できる方々です。そういった人事の方が孤独になるのではなく、私たちや「人事図書館」のような場を活用し、相談や議論をして安心感を得てもらえたらいいなと思います。 

人間性を取り戻すアウトドア研修

人間性を取り戻すアウトドア研修

---エンゲージメント向上の施策として、アウトドア研修にはどんな意義がありますか?

 

吉田:SPBSさんのアウトドア研修は、エンゲージメントの観点において大事な要素が詰まっていると思います。エンゲージメントは、「この組織で頑張りたい」「この事業を成功させたい」といった気持ちの側面が大きいですが、目の前の仕事に追われていると気持ちを失いかけてしまうこともあると思います。


特に会社員として働いていると、鎧を着ている状態になりやすく、感情を表に出さないようにとか、自分本位ではいけないとか、立場上こうあるべきといったことを背負って、人間としての喜怒哀楽を出す機会がどんどん減っていく。それがエンゲージメントを下げる要因になってしまうのです。


アウトドア研修のような施策で、普段とはまったく違った、鎧を脱ぎやすい環境に身をおいて、人間同士としてお互い交流し、自分はどんな人間でどういうことに喜怒哀楽を感じるのかを開示し合い、共通体験をすることで関係性をつくるというのは組織にとって意味のあることだと思います。

 

坪内:ありがとうございます。アウトドア研修の本質的な部分に言及していただいたように思います。

 

SPBSのアウトドア研修は、なにかスキルを学んでもらうためのものではなく、本来私たちが持っている人間性を取り戻すためのものなのです。
例えば、「顔色が悪いけど大丈夫?」「仕事詰まってない?」といった声がけが日常的にあるだけでも仕事はやりやすくなります。でも、余裕がなかったり効率を最優先する職場では、他者への配慮は後回しになってしまいます。困っていそうな人に声をかけるという普通のことが人間関係の根本です。お互いの顔を見て相互に助け合えるような関係性というのが、エンゲージメント向上のためにも求められています。

 

吉田:アウトドア研修を管理者と社員が一緒にするとさらにいいことがあって、管理者側が楽になれるんです。共通体験を通してお互いの人となりを理解し、“今ここにいる意味”を確認し合うことができれば、管理者だけが重荷を背負わなくても、社員と分かちあって事業を進めていくことができるようになります。

 

坪内:部署を超えた関係性づくりもできるといいですね。同じ部署のメンバー同士は日頃から交流があると思いますが、部署を超えたつながりがあることによって、仕事がより円滑に進み、助け船を出してもらえたりすることは往々にあります。部署を超えたコミュニケーション構築のためにアウトドア研修を実施していただくことも多いです。
 

人事施策を成功させるために

人事施策を成功させるために

 

---意味のある人事施策を行うために、どんな手法をとるといいでしょうか?

 

吉田:トム・ニクソンの『すべては1人から始まる』という著書の中で言及されていますが、どんなプロジェクトにおいても「誰が本気でやりたいのか?」に立ち返ることが必要です。

 

エンゲージメント向上といった課題があるとして、本気で取り組みたいと思っているのは誰なのか。人事部としてエンゲージメント向上が欠かせないという判断なのだとしたら、それは人事が意志をもって取り組むべきですし、社長であったり現場であるならば、課題を一番解決したい人と人事が組んでプロジェクトチームのような形で進めるといいのではないでしょうか。


誰だって、自分は困っていないのにやれと言われたら辛いですよね。あらゆる施策を人事が担う構造になっていると辛い仕事にならざるを得ない。そうではなく、課題感をもって本気でやりたい人を人事が支援し、解決していくのが本来の自然な姿ではないでしょうか。

 

坪内:熱い想いをもっている方がプロジェクトに取り組むというのは、すごく大事です。私たちが組織活性化の支援をする場合にも、担当の方が本気であればあるほど、この会社は良い方向にいくという自信になりますし、私たちも本気で向き合っていけます。プロジェクトチームの場合は、会社をこのチームでよくしていくんだという想いをもつメンバーが集まっている状態というのがうまくいく一番の要因になっています。
 

 

吉田:そういったプロジェクトの進め方ができるといいですね。ただ、ご相談をいただく中では、7、8割方の組織はそうなっておらず、だからこそ人事の方が悩んでいます。これは余裕がないことに起因します。問題意識を現場と共有したくても時間がなかったり、効率が優先されてしまったりする。いかに余白のある関係性をつくっていけるかが重要です。

 

坪内:慢性的に時間に追われ、余裕をなくしている組織は多いのではないでしょうか。SPBSのアウトドア研修は、余白をつくるための時間でもあります。人間が本来持っている優しさや相手への気遣いを、忙しさだとか鎧を着ているせいで出せなくなってしまっている。その状態から、鎧を脱ぎ捨てて相手の話を聞く時間をつくりましょうと提案しています。

 

そういった時間は、課長部長など役職者クラスにこそ必要だとも思います。普段メンバーの話を聞く役割を担っていて、自分たちは聞いてもらう機会はほとんどありません。逆に部下は、上司が何を考えているか分からなくて、コミュニケーションの齟齬が起こっています。ですから、アウトドア研修の中では対話の場を設けて、メンバーも役職者もみんなが聞いてもらう時間を設けるようにしています。

 

先日読んだ、臨床心理士の東畑開人先生の『聞く技術 聞いてもらう技術』という本の中でも、余裕がないと人の話を聞けないということが書いてありました。余裕をもつために、まずは自分が話を聞いてもらうということを意識してほしいです。

 

吉田:話を聞いてもらう場、悩みを共有する場として、「人事図書館」も機能していきたいですね。「人事図書館」は、名刺交換原則禁止というルールを設けていますので、所属している組織や役職関係なく、誰もが鎧も脱いだ状態で、一人の人間として悩んでいることや聞いてもらいたいことを話せると思います。

 

人事の仕事は答えがないと言われる通り、本当にいろいろな手法がありますし、どんな手法を取っても批判にさらされやすいポジションという側面があります。批判を受けても元気な状態であれば、学んでみよう、別の施策を考えてみようと前向きに捉えられますが、心が折れて諦めてしまったら、組織は何も変わっていかない。

 

「人事図書館」は、組織をよりよくしたいと思っている人たちが、その種火を消すことなく、仲間とのつながりと学びを得て、一歩前に進むための拠り所になっていきたいです。
 

人事担当者へのエール

人事担当者へのエール

 

---ありがとうございます。お二人から人事として働く方々にエールをお願いします。

 

吉田:一番大事なのは、「一人で抱えない」ということだと思います。人事に降ってくる仕事をすべて自分の役割だと感じて、孤軍奮闘すると苦しくなってしまいます。本気でやりたいと思っている人を巻き込んで、一緒に取り組むことで希望が見えてくるのではないでしょうか。

 

組織のエンゲージメントが高くなると、会社の雰囲気がよくなり、より安心して働けるようになります。その姿をイメージして、この取り組みによって組織がよりよくなるという希望をもち、組織のために本当に意味のある仕事なんだと腹落ちした状態で取り組めると、きっと勇気が湧いてきます。

 

坪内:人事の仕事は成果がすぐには現れるものではないので、掴みにくくて不安になることもあると思います。そういうときに私たちSPBSは相談に乗りたいと思っています。吉田さんが言ってくださったように、一人で抱えるのではなく、「誰と何を成し遂げるか」を明確にすることが重要です。

 

エンゲージメント向上であったり組織活性化のプロジェクトでは、成し遂げた先の未来をぜひ思い描いてください。思い描いた未来を実現するために私たちも一緒になって取り組んでいきますので、一人で抱えずに相談していただければと思います。

 

吉田洋介(よしだ・ようすけ) 氏
Profile

吉田洋介(よしだ・ようすけ) 氏

人事図書館 館長
株式会社Trustyyle 代表取締役

日本最大手の組織人事コンサルティング企業で、国内外の大手企業からスタートアップまで500社以上の企業に対し、人材採用、人材育成、人事制度、組織調査、1on1導入などの経営支援をおこなう。
「『人事の学び合い、支え合い』を当たり前にしたい」との想いから、2024年4月に東京人形町に人事図書館を開設。

吉田洋介(よしだ・ようすけ) 氏
Profile 吉田洋介(よしだ・ようすけ) 氏

人事図書館 館長
株式会社Trustyyle 代表取締役

日本最大手の組織人事コンサルティング企業で、国内外の大手企業からスタートアップまで500社以上の企業に対し、人材採用、人材育成、人事制度、組織調査、1on1導入などの経営支援をおこなう。
「『人事の学び合い、支え合い』を当たり前にしたい」との想いから、2024年4月に東京人形町に人事図書館を開設。

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