スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
多くの企業が「従業員エンゲージメントの向上」とそれによる「変革できる組織」を目指しています。
各種サーベイの導入、1on1ミーティングの制度化、表彰制度や報奨金の導入など、さまざまな施策が実践されています。しかし、それらの取り組みによって一定の効果は見られるものの、社内の変化を実感できないという声もよく聞きます。
さまざまな合理的な施策に取り組んでいるにも関わらず、変化できない。
それは従業員の“本当の動機”に火をつけられていないからかもしれません。
スノーピークビジネスソリューションズが提供するアウトドア研修では、自己効力感と内発的動機を高める構造が組み込まれています。この構造を支える学術的な理論は、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」が有名です。
この理論では、人が内側から動きたくなるためには、以下の3つの欲求が満たされていることが重要だとされています。
1. 自律性(Autonomy)
「自分で選んでいる」という感覚は、行動を意味あるものにします。
アウトドア研修では、タープの張り方や役割を話し合って決める、焚火の起こし方を自ら考える。そうした“選択の余地”が至る所にあります。その積み重ねが「自律的に動いている実感」を育みます。
2. 有能感(Competence)
薪を割り、火を起こし、仲間と協力して料理を完成させる。
普段の業務とは異なる未知のチャレンジの中で、「自分にもできた」という実感が得られます。しかもそこに“正解”はありません。だからこそ、自らの創意工夫が発揮され、その結果としての成功体験が、有能感を深く根付かせるのです。
3. 関係性(Relatedness)
共同作業で支え合い、焚火を囲んで語らう。
原始的な営みの中で、自然と人との距離は近づいていきます。「この人とならやっていける」「自分はここにいていい」そんな信頼感が、安心して力を発揮できる土壌になります。
この3要素が満たされると、人は“やらされ感”から解放され、「もっとやってみたい」と内側から湧き上がる意欲を持つようになります。
私たちは、この内発的動機づけの構造を業務現場に次の3ステップで導入しています。
Step1. Whyの合意形成―自律性を育む最初の一歩
「なぜこの仕事をするのか?」という意味づけを、上司とメンバーが共有することから始まります。
目的が腹落ちしていない状態では、行動が受動的になります。仕事を依頼する際には、背景や意義、なぜこのメンバーに頼むのかを丁寧に伝えることが、自律的な行動への第一歩となります。
Step2. プロセスの共有―ゴールへの主体的な歩み
目的地が共有されても、その道筋が見えていなければ人は迷います。
プロジェクト開始時に「どう進めていくか」を対話しながら共有することで、メンバーはゴールまでの地図を持ち、自分の役割と責任を主体的に捉えることができます。また進行中にも立ち止まり、道筋を再確認・修正する習慣が、継続的な内発的動機づけにつながります。
Step3. 良好な人間関係―関係性の土台づくり
方向性とプロセスを共有したうえで仕事を進めると、メンバー間の関係性は自然と良好になります。
役割を超えて助け合い、思いを共有することで、職場に心理的安全性が生まれます。これは、自己決定理論の「関係性」の要素そのものであり、チームとしての一体感と信頼感を醸成する大きな要因となります。関係性の向上はこうしたプロセスを経ることで、業務の中にも有能感が生まれていきます。自ら選び、考え、チームと協力して成し遂げた結果に対して、「自分にもできる」という実感が得られるからです。
MIT(マサチューセッツ工科大学)ピーター・センゲは『学習する組織』の中で、「人は変化が嫌なのではない。変化をさせられるのが嫌なのだ」と述べています。まさに、“やらされ感”が蔓延している組織では、どんなに立派な変革プランを掲げても人は動きません。
一方で、“やりたい”という内発的な動機があるチームでは、自分ごととして変化を起こす力が湧いてきます。つまり、変化を可能にするかどうかは、素晴らしい戦略や制度ではなく、「動機の質」が最重要のエンジンになります。
制度や仕組みだけでは、人の内面までは変えられません。だからこそ、私たちは「体験を通じて、動機づけの構造を再設計する」アプローチを提案しています。
自然という非日常の環境で、肩書きや評価から一歩離れ、仲間とともに試行錯誤しながら協働する──。
そこに、ありのままの自分に戻り、本当の「やってみたい」が生まれる瞬間があります。
私たちは、この“やってみたい”という想いこそが、組織の未来を切り拓くエネルギーだと信じています。