スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
スノーピークビジネスソリューションズ代表の坂田です。
このコラムでは、私たちの会社が大切にしている価値観や目指す未来について、みなさまにお伝えしていきたいと考えています。
読んでくださった方にとって、新たな「気づき」となり、日々の暮らしや働き方がよりイキイキとワクワクするものになれば幸いです。
「現場が優秀で、何とかやり切ってしまう」――
忙しくても締め切りを守り、トラブルが起きても誰かが火消しをして、結果としてお客様や社内の期待に応えてしまう。
そんな素晴らしい現場のメンバーたちがいる企業も多いと思います。
ただ同時に、その強さがあることで“見えにくいリスク”を抱えているケースもあります。
“頑張り”で回せてしまうと、仕組みの歪みが表に出にくくなるということです。
つまり、本当は構造を変えるべきタイミングでも、「人が頑張れば何とかなる」という前提が残ってしまう。
ここが、次の成長に向けた分岐点だと感じます。
私たちがこのような状態で重視しているのが、組織の状態をシステムとして見ることです。
システム思考という考え方にも通ずるところがありますが、「原因を一つに特定する」ための思考ではありません。「同じ問題が繰り返される構造」を捉えるための視点です。
私たちは祖業がシステム会社のため、組織の構造や状態をシステムと捉え、設計を考え、アクションしてきました。
まず、そのための最初の一歩は、課題を“単発の事件”として扱わないことです。
たとえば「請求ミスが起きた」と聞くと、その犯人探しや、直接的な原因の調査に目が向きがちです。
担当者の確認不足か。
チェック体制が弱いのか。
もちろんそれも一部は関係します。
ただその出来事を “点として捉えるのではなく、構造として見るためには、次のような視点が必要になります。
・そのミスは、過去3ヶ月で何回起きているか
・いつ増えるのか(月末、繁忙期、引き継ぎ直後など)
・忙しい時ほど必ず増える作業は何か(割り込み、確認、二重入力、手戻り)
こうして見ていくと、出来事は点ではなく、線になっていきます。
さらに線をつなぐと、そこに「循環」が見えてきます。
たとえば、忙しい→確認が減る→手戻りが増える→さらに忙しくなる。
あるいは、属人化→問い合わせが集中→割り込みが増える→ますます属人化が進む。
これは「誰か個人の問題」ではなく、「組織の構造が生み出している循環」です。
だからこそ大切なのは、“頑張り”を追加する打ち手に流れないことです。
残業を増やす。
チェックを増やす。
気を引き締める。
こうした対症療法は短期的に効きますが、長期的には負荷を高め、循環をより悪化させることもあります。
だからこそ、循環そのものに手を打つ必要が出てきます。
システムとして組織を見る面白さは、すべてを一度に変えなくてもいいところにあります。
重要なのは、少し動かすだけで全体が変わる支点――レバレッジポイントを見つけることです。
現場で見つかるレバレッジは、派手なものはあまりなく、目の前の細かいことに泥臭くアプローチすることが多いと感じます。
たとえば、「判断基準の仕組化」です。
誰かの頭の中にある判断が多いほど、周囲は確認を必要とします。
確認は割り込みを生み、割り込みが集中を奪い、結果としてミスが増えていく。
こうした循環が生まれます。
このとき、単にチェック工程を増やすのではなく、判断基準を仕組みし、入力項目を揃え、例外処理の方針を決める。
こうした手を打つことで、確認が減り、割り込みが減り、集中が戻り、結果としてミスも減っていきます。
もう一つは、「情報の流れの整理」です。
情報が分散していると、探す・聞く・待つが増えていきます。
探す時間は見えにくいため、つい“頑張り”で吸収されがちです。
けれど、この見えにくい時間こそが、慢性的な忙しさを生んでいるケースは、とても多いと思います。
情報の入口を揃え、誰が見ても同じ場所に辿り着ける状態をつくる。
それだけで、忙しさの源が一気に減ることがあります。
俯瞰して構造を見ると、改善の本質は「人を速く動かすこと」ではなく、「人が無理をしなくても回る構造に戻すこと」にあるのだと思います。
「構造を整える」という話を、より分かりやすく実務に落とすために、私たちはエンゲージメントを5段階で捉えています。
ポイントは、エンゲージメントを気持ちの問題ではなく、“組織の構造”として扱うことです。(コラムVol.41参照)
・①BASE(心身の土台)
慢性的疲労や緊張が続くと、人は視野が狭くなり、思考が短期化します。循環を見ようとしても見えない状態になります。
・②WORK DESIGN(仕事の設計・裁量)
やらされ感や裁量のなさは、改善の主体性を奪います。「気づいても変えられない」構造が固定化します。
・③GROWTH(成長実感・自己効力感)
自分はできる、役に立っているという実感が育つと、仕事を“自分ごと”として捉えられるようになり、改善の当事者が増えます。
・④RELATION(関係性・心理的安全)
関係の質が上がると、問題を個人の責任にせず、構造として語れるようになります。ここで初めて、チームが学習し始めます。
・⑤MISSION(意味・社会的意義)
なぜこの仕事をするのかが腹落ちすると、改善が一過性で終わらず、文化として残っていきます。
ここで重要なのは、④関係性だけを鍛えようとしても難しいという点です。
BASEが崩れ、WORK DESIGNが硬直し、GROWTHが育っていない状態では、関係性に向き合う余裕も、自信も生まれにくい。
だからこそ、まず③の自己効力感や自己有用感が得られる状態をつくることが、結果的に④を支える土台になります。
MIT(マサチューセッツ工科大学)のキム教授が示した成功循環モデル(コラムVol.17参照)では、関係の質が上がることで思考が変わり、行動が変わり、結果が変わるとされています。(参考文献【1】)
私たちの実感でも、エンゲージメントの③が育ち、④が立ち上がり始めたあたりから、まさにこの循環が動き出します。
会議で本音が出る。
問題が起きたときに「誰のせいか」ではなく「何の構造か」を話せる。
部署を越えて相談が起きる。
こうした変化が見え始めたとき、組織はスパイラルアップ発動条件に立っていると感じます。
そして、ここでITを活用していくことも重要です。
私たちはITを単なる「効率化の道具」ではなく、「決めた運用を定着させる装置」として捉えています。
判断基準や情報の流れ、例外処理の方針が整ったうえで、入力・承認・通知・ログといった仕組みをITで固定していく。
すると、改善は“誰かの努力”ではなく“組織の当たり前”としてオペレーションに流れていきます。
スノーピークビジネスソリューションズでは、サーベイを通じてエンゲージメント5段階のどこに課題があるかを可視化し、ステージごとに支援の組み立てを変えています。
アウトドア研修による協働体験や対話の設計、キャンピングオフィスのような環境づくり、そしてMicrosoft 365などのIT活用支援。
これらを組み合わせながら、構造を整え、循環を変える伴走を行っています。
頑張れる組織ほど、次の成長には「立ち止まって構造を見る力」が必要になります。
出来事に追われるのではなく、循環を見て、支点(レバレッジポイント)を選び、段階を踏んで整えていく。
組織をシステム的に捉え、成功循環を考え、エンゲージメント5段階を活用することは、そのための強力な道具になると思います。
私たちはこれからも、自然の力とテクノロジーの力を掛け合わせながら、人が人間らしく力を発揮できる組織づくりを支えていきたいと思います。
【1】Kim, D. H. (1999).Introduction to Systems Thinking.Waltham, MA: Pegasus Communications.